「最近、子どもが学校から帰ってきてもスマホをじーっと見て、何も話してくれなくて…」
小5・6年生になると、友達トラブルの"質"がガラッと変わります。低学年の頃は「叩いた」「おもちゃを取られた」といったわかりやすいぶつかり合いでしたが、高学年になると「グループから外された」「LINEに入れてもらえない」「陰で悪口を言われてる気がする」と、親の目には見えにくいトラブルが増えていきます。
「なんでそんなことするの?」と思う前に、知っておいてほしいことがあります。これは、子どもが意地悪な性格だからではなく、この年齢特有の「発達の段階」がそうさせているからです。
保育士として19年、現場でたくさんの子どもたちの人間関係を見てきた私MIMAが、小5・6年生の友達トラブルが複雑になる理由と、親にできる関わり方を解説します。
💬 よくある質問(30秒でわかる結論)
A. スマートフォンを親が近づくと隠す、食欲が落ちた、学校の話をしなくなった──これらは要注意サインです。「何があったの?」と直接聞くより「最近どう?」と雑談から始めると話しやすくなります。
A. まず「あなたが悪い」とは言わないこと。「外された子、どんな気持ちだと思う?」と問いかけ、子どもが自分で考えるきっかけを作ります。責めるより「一緒に考える」姿勢が、子どもの道徳心を本当の意味で育てます。
A. ①「学校に行きたくない」と言い始めた、②1週間以上続いている、③頭痛・腹痛など身体症状が出ている──この3つが重なったら、担任かスクールカウンセラーへ。「大げさかな」と思わなくて大丈夫です。
小5・6年生の友達トラブルが複雑になる理由
思春期の入り口で「自分は何者か」が揺れ始める
小5・6年生(10〜12歳)は、発達心理学者エリクソン(Erik Erikson)が示した、心理発達の大きな転換期にあたります。
エリクソン(1963)によると、6〜12歳の子どもは「勤勉性 vs 劣等感」の段階にあります。学校での成功体験や友達との関係を通じて「自分にはできる」という感覚を育てる時期です。ところが小5・6年生になると、この段階の終盤を迎えながら、同時に「アイデンティティ vs 役割拡散」(思春期・12〜18歳)の入り口にも差しかかります。
📘 発達心理学の根拠
エリクソン(1963)は、アイデンティティ形成期の入り口において「自分は何者か」という問いが子どもの中に芽生え始めると指摘しています。この揺らぎが、友達グループへの強い帰属意識や「仲間から認められたい」という切実な欲求として表れます。
出典:
つまり、小5・6年生の子どもは「自分はどんな人間なのか」を、友達関係の中で試している段階にいるのです。だからこそグループへの帰属が、命取りに感じられるほど重要に映るのです。
保育現場でも、5年生ごろから急に子どもたちの人間関係が複雑になるな、と感じていました。みんな強がっているけど、心の中はとても揺れているんだなって。
「仲間から認められたい」が行動を支配する時期
この年齢の子どもの道徳観を理解する上で、発達心理学者コールバーグ(Lawrence Kohlberg)の理論がとても参考になります。
コールバーグ(1969)によると、7〜12歳の子どもは道徳発達の第3段階「対人的一致」にあります。この段階では、「仲間の目に自分がどう映るか」が道徳的判断の基準になります。
📘 発達心理学の根拠
コールバーグ(1969)は、この段階を「仲間の意見の倫理(ethics of peer opinion)」と呼んでいます。子どもたちは仲間に「良い子」「一緒にいたい子」と思われることを最優先し、承認を得るために行動します。この段階は7〜12歳(小1〜小6)に相当します。
出典:Kohlberg, L. (1969). Stage and sequence. In D. A. Goslin (Ed.), Handbook of socialization theory and research. Rand McNally. / Berkowitz, M. W. (2001). Kohlberg's theory of moral development. Pediatrics, 107(4).
「グループから外す」という行動は、大人の目には意地悪に映ります。でも子どもの内側では、「自分が外されないために」という生き残り戦略として起きていることが多いのです。
高学年に多い友達トラブル3パターン
①グループ外し・無視・仲間外れ
「最近、〇〇ちゃんグループが私に話しかけてくれない」「給食のとき一人で食べた」──こういった声が増えるのが高学年の特徴です。
仲間の承認を求めるがゆえに、「誰かを外すことで自分たちの結束を強める」という構造が生まれやすくなります。でも、その行動の根っこにあるのは意地悪さではありません。
💙 子どもの本音
「外したいんじゃない。
自分が外されるのが、一番怖いんだ。」
この「怖さ」が行動の根っこにあることを知ると、子どもを責める前に少し違う見方ができるかもしれません。
②マウンティング・悪口・比較
「あの子って、走るの遅いよね」「テストの点数、何点だった?」──友達同士の比較や、相手を下に見る発言が増えるのも高学年の特徴です。
「自分は何者か」がまだはっきりしていないとき、誰かと比べて「あの子よりは上」と感じることで、一時的に自信を補おうとするのです。
💙 子どもの本音
「自分がダメだと思いたくないから、
つい誰かと比べてしまう。
比べなくていいって、頭ではわかってるんだけど。」
③SNS・LINEでのトラブル
高学年になってスマートフォンを持ち始める子が増え、それとともに増えるのがSNSやLINEを使ったトラブルです。既読無視、グループLINEからの退出、陰での悪口のスクリーンショット拡散──学校が終わっても家の中まで追いかけてくるのが、SNSトラブルの最大の特徴です。
📘 研究データ
Tokunaga(2010)は、サイバーいじめを「電子メディアを通じて個人または集団が繰り返し発信する、他者に害や苦痛を与えることを意図した敵意ある行動」と定義しています。従来のいじめとの最大の違いは「24時間どこにいても被害を受ける」点。被害者は「スマートフォン・メール・SNSを通じて一日中追いかけられる」とされています。
さらに、小5での発生率は4.5%ですが、中2では12.9%に急増します(Tokunaga, 2010, )。小5・6年生は、この急増の手前にいる「予防のゴールデンタイム」です。また、被害を受けた子どもが親に相談する割合はわずか1〜9%。「スマートフォンを取り上げられるかも」という恐れから、親に言えない子がほとんどです。
出典:Tokunaga, R. S. (2010). Following you home from school. Computers in Human Behavior, 26(3), 277–287. DOI: 10.1016/j.chb.2009.11.014
💙 子どもの本音
「返信が来るまでの時間が、ずっと怖い。
既読になっても、ならなくても、
『みんな今、私のことをどう思ってるんだろう』
って考えてしまって、スマホを手放せない。」
親にできる関わり方
❌NG対応①「この子はこういう子」ラベリングをする
保育士として多くの保護者と関わる中で、子どもの成長を一番見えにくくしてしまう言葉に気づきました。「この子は〇〇だから」という親のラベリングです。
「うちの子、恥ずかしがり屋だからできないんです」──そう語る親御さんのお子さんが、実は土壇場でしっかり力を発揮できる子だった、というケースに何度も出会ってきました。
繰り返し「あなたはこういう子」と言われることで、子どもはその枠の中に収まろうとし、本来持っている力を発揮できなくなってしまいます。友達トラブルの場面でも「うちの子は気が弱いから」という見方が、子ども自身の可能性を見えにくくします。
保護者の方が善意で言っている言葉が、知らず知らずのうちに子どもを縛っていることがあります。「この子はこういう子」ではなく、「今はこういう段階にいる」という見方に変えるだけで、関わり方がずいぶん変わります。
❌NG対応②「どっちが悪い?」と白黒つけようとする
「誰が先にやったの?」「どっちが悪いの?」と確認しようとする親御さんは多いです。気持ちはとてもわかります。でも高学年のトラブルは「どっちが悪い」で割り切れないことがほとんどです。
「外した側」にも「外された側」にも、それぞれの事情や怖さがあります。どちらが正しいかを決めようとすると、子どもは「どう答えれば責められないか」を考えはじめ、本音を話さなくなります。
✅OK対応①子どもの話を評価せずにまず聞く
高学年の子どもが親に話してくれるとき、求めているのは「解決策」より「わかってほしい」という気持ちです。まずは途中で口を挟まず、「そうか、それはつらかったね」とただ聞くことから始めてみてください。
「でも、あなたも〇〇したんじゃないの?」「先生に言いなさい」──こういった言葉は、一見正論でも、子どもの心を閉じさせます。評価や解決を急がず、まず「気持ちをわかってもらえた」という体験を積み重ねることが、長い目で見ると信頼関係の土台になります。
✅OK対応②その子の「良さ」を具体的な言葉で伝える
キャンプカウンセラーのボランティアをしていた頃のことです。疎外感を感じたくないがゆえに、グループ内の一部の子のみを囲い込もうとする子がいました。
夜、グループごとに森に入ってキャンドルを囲んで輪になり、一人ひとりの良さを語り合う場を作りました。自分の良さを自分で言ってもらうとなかなかそれが出てこない子も。その後、私から「〇〇ちゃんはみんなの気持ちを明るくするのが上手。その明るさは太陽の光と一緒。そんな人にもその光を届けて欲しいなって思うよ」そう伝えると、翌日にはそれまで距離を置いていた子と、はんごう炊さんで遠慮しながらも言葉を交わし、一緒に火を起こす姿が見られました。
「良い子でいなさい」ではなく、「あなたにはこんな良さがある」と具体的に伝えること。それが、グループに頼らなくても「自分はここにいていい」という感覚の土台になっていきます。
「あなたの良さを私はちゃんと知ってるよ」という大人の一言が、子どもの安心や自己肯定感につながるんです。自分を認められた子は、安心して他者も受け入れ認めていくことができます。
✅OK対応③SNSトラブルは「証拠を残す・相談する」
SNSでのトラブルに気づいたとき、まず「スマートフォンを取り上げる」という選択をする親御さんがいます。気持ちはわかりますが、Tokunaga(2010)が示すように、子どもが親に相談しない最大の理由が「取り上げられるかも」という恐れです。まずスマートフォンを取り上げずに話を聞くことが、信頼の第一歩になります。
その上で、①スクリーンショットで証拠を保存する、②担任やスクールカウンセラーに相談する、③「学校に行きたくない」が1週間続いたら迷わず専門家へ──この3ステップを念頭に置いてください。
まとめ
小5・6年生の友達トラブルが複雑になる理由と、親にできる関わり方をお伝えしました。最後に3つのポイントを振り返ります。
- 高学年のトラブルは「意地悪」ではなく「発達の段階」から来ている。エリクソンの移行期・コールバーグの仲間承認欲求が背景にあります。
- グループ外し・マウンティング・SNSトラブルそれぞれに、子どもなりの「怖さ」がある。行動の裏側にある気持ちを理解することが、関わり方の出発点です。
- 親にできる一番大切なことは「まず聞くこと」と「その子の良さを言葉にすること」。解決を急ぐより、「わかってもらえた」体験の積み重ねが子どもを支えます。
ここまで読んでくださったあなたは、すでに十分お子さんのことを考えているお母さん・お父さんです。完璧に対応しなくていい。ただ、子どもの隣にいる大人でいてください。それだけで、子どもはずいぶんラクになれます。
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参考文献
- エリクソン(Erik H. Erikson). 幼児期と社会(Childhood and Society). 1963年. W. W. Norton & Company.
- コールバーグ(Lawrence Kohlberg). 道徳性発達の段階と順序(Stage and Sequence). 1969年. Rand McNally. / Berkowitz, M. W. (2001). Kohlberg's theory of moral development. Pediatrics, 107(4).
- トクナガ(Robert S. Tokunaga). (2010). Following you home from school. Computers in Human Behavior, 26(3), 277–287.
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