え!?どうして、また嘘つくんだろう…
「うちの子、また嘘をついた…」
そんな時、親としてはショックを受け
思わず「嘘はダメでしょ!」
と、つい叱ったり、大きな声で注意してしまうことがあるかもしれません。
結論として
子どもは誰しも嘘をつきます。
なぜなら、発達段階に必要不可欠な通過点だからです。
しかし、その嘘には発達段階ならではの理由や背景があります。
この理由をしっかり理解し、対応できるかで、
嘘がどんどんエスカレートしてしてしまうのか?
自然と減っていくのか?
が決まるのです。
嘘をつくことは悪いこと? いいえ、嘘は「成長の証」です!
「嘘はいけないこと」と言われがちですが、発達心理学の視点では、嘘をつく力もまた、認知の成長の一部です。
ですから、「嘘をつける発達段階に入った成長の証」ということもできるのです。
嘘をつくために必要な発達要素
・相手の気持ちを想像できるようになる
「相手はどう思ってる?」
「何を知らない?」
「なぜそんな行動をしたのか?」を想像する力
・現実と想像を区別できるようになる
・社会的なルールを学び始める
これらの力が育ってくると、子どもは意図的に嘘をつけるようになります。
それは「悪意」ではなく、
・「どうにかうまくやりたい」
・「怒られたくない」
・「自分を守りたい」
などの気持ちが背景にあることが多いのです。
これらは“社会的な嘘”や“自己防衛のための嘘”と呼ばれることがあります。
【年齢別】子どもの嘘の特徴と関わり方
幼児期(3〜5歳):「嘘」と「想像」と「注目欲求」が混ざる時期
この時期の子どもの嘘は、空想と現実の区別がまだはっきりしていないことが多いです。
たとえば「おばけがやった!」という言い訳も、本人にはリアルに感じられる空想の世界の表れです。
さらに、寂しい気持ちや注目されたい気持ちから、わざと嘘をついて保護者の関心を引こうとすることもあります。
「すごいことを話したい」「特別な存在として見てもらいたい」というプライドや見栄も、少しだけ関わっている場合があります。
対応のヒント
・頻繁に嘘をつく場合は、寂しさや注目欲求が背景にあることも意識して対応する。
・「ほんとにおばけが来たのかな?こわかったね」と、想像の世界を受け止めつつ現実に戻す声かけをする。
・嘘を責めるよりも、「どうしてそう思ったのかな?」と気持ちに寄り添う姿勢を大切にする。
学童前期(6〜8歳):「怒られたくない…」防衛的な「嘘」が増える
学校生活が始まるこの時期は、怒られたくない、恥をかきたくないという気持ちから、防衛的な嘘が増えやすくなります。
この時期の嘘には、自己価値を守ろうとする気持ち(プライドや見栄)が関わっていることもあります。
「正直に言ったら叱られるかも」「できないところを見せたくない」と思う心理です。
対応のヒント
・嘘を責めるよりも、「どうしてそう言ったのか」を一緒に探る姿勢を大切にする。
・嘘の背景には不安やプレッシャーがあることを理解する。
・「正直に言ってくれてうれしいよ」と、本音を話せたときの安心感を伝える声かけをする。
学童後期(9〜12歳):「自分の立場を守る」「人間関係を調整する」嘘
この時期になると、人との関係を調整するための嘘や、自己保身のための嘘が出てくるようになります。
たとえば、「〇〇ちゃんもやってた」と言って責任を分散させたり、相手をかばったりがそうです。
この背景には、仲間関係での気まずさや恥ずかしさ、仲間外れになりたくないという心理が隠れています。また、プライドや見栄も関係しており、子どもなりに自分の立場や評価を守ろうとしています。
対応のヒント
・嘘の中にある「気まずさ」「恥ずかしさ」「仲間外れになりたくない気持ち」など本音をくみ取りましょう。
・「本当のことを話せるあなたの勇気はすごいね」と、信頼されている実感を与える声かけをしましょう。
・「嘘はいけない!」と否定するより、なぜその選択をしたのか、どうすればよかったかを一緒に考える時間を大切にしましょう。
思春期(10歳後半〜18歳):「自他を守りたい」「本音を守りたい」嘘
この時期の子どもは、心も体も大人に近づく一方で、まだ不安定な面も多くみられます。
嘘は単なる“悪い行為”ではなく、親や大人から距離を取りたい気持ちや、プライド・プライバシー・人間関係のバランスを守るための防衛的な行動として出てくることが多いです。
この時期の嘘には、自立と葛藤のあらわれという側面もあります。親としては、ただ叱るのではなく、子どもの気持ちや状況を理解しようとする姿勢が重要です。
対応のヒント
・嘘そのものを責めるよりも、「どうしてそう言ったのかな?」とその裏にある本当の気持ちを想像しながら関わる。
・「本当のことを話してくれてありがとう」「言いにくいことを伝えてくれてうれしい」と、本音を話せる安心感を与える声かけを心がける。
・話したくない気持ちも尊重しましょう。また、その時は話せなくても、「困ったらいつでも相談してね」と言葉を添え見守る。
嘘がエスカレートしてしまう背景
・正直に話しても「受け入れてもらえなかった」経験
・「どうせ怒られる」など、怒られることへの過度な恐れや諦め
・本音を話せない親子関係
などがあります。
子どもが「本当のことを話すと自分(や相手)が傷つく」「怒られるのではないか」「否定されるのではないか」と感じてしまうと、嘘をついて“自分を守ろう”とします。それは悪意ではなく、子どもなりの生きる工夫のひとつです。
ただ、その方法でうまくやり過ごせた経験が積み重なると、「嘘で切り抜ける」ことが習慣になり、だんだんエスカレートしていく場合もあります。
だからこそ、「嘘以外でも安心して気持ちを伝えられるんだ」という体験を重ねていくことが大切です。
✨「素直に話せる子」になるためにできること
では、どうすれば子どもが正直に話してくれるようになるのでしょうか?
1. 子どもの気持ちに寄り添う
「なんでそんなことしたの?」と聞くと、「なんで」の中に”いけない事””だめなのに”といった大人側の否定的概念が込められていることを感じ、素直な気持ちを出せなくなります。
「〇〇だったんだね」「そう思ったんだね」と、話を聞いたときは、まず共感から入ることで本音が出やすくなります。
2. 失敗を認めてもらえる経験を増やす
「失敗しても大丈夫なんだ」と感じられることで、嘘をつく必要がなくなります。
3. 嘘を責めるより、「話してくれてありがとう」
「正直に話してくれてうれしい」「大丈夫、一緒に考えよう」
そんな言葉が、子どもにとって安心して話せる土台になります。
おわりに:嘘の奥にある、子どもの本当の“気持ち”を見つけましょう
子どもが嘘をつくと、親は不安になったり心配になったりしますよね。
でも、子どもの嘘は「悪意」ではなく、
「未熟さ」や「防衛本能」「関係を大切にしたい気持ち」の現れであることがほとんどです。
大切なのは、その嘘の奥にある子どもの真の気持ちに気づくこと。
「本音をきいてもらえるんだ」「受け止めてもらえるんだ」という経験を積み重ねることで、
子どもは少しずつ「素直に話しても大丈夫」という安心感が育まれます。
子どもの気持ちに寄り添いながら、子どもの心に向き合っていきましょう。
