「どうしてごめんねが言えないの?」
そんな場面が続くと、「私の関わり方が悪かったのかな」と自分を責めたくなることもありますよね。
でも、大丈夫。
子どもが謝れないのは、育て方のせいではありません。
年齢によって謝れない理由はまったく違うのです。子どもはそれぞれの発達段階で少しずつ「謝る力」を育てている最中です。その背景を知ると「なんでうちの子は…」という焦りが、「そうか、今はそういう時期だ」という受け止め方に変わります。
児童養護施設や少年院、保育園など様々な現場を経験してきた保育士歴19年×3児ママが、失敗をいっぱいしたからこそ学んだ、「子どもにとって本当に大切な事」を分かりやすく紹介しています。
子どもが「ごめんね」を言えない背景
子どもが謝るためには、以下の能力が必要です。

- 相手の気持ちを想像する力(共感力)
- 自分の感情を整理してコントロールする力(自己調整力)
- 言葉や行動で気持ちを表す力(自己表現力)
年齢や発達段階によっては、まだ十分に育っていない部分があるため、謝れないことがあります。
私たち大人にできるのは「無理に言わせる」ことではなく、「体験を通して心を育てる」ことです。
年齢別に見る「謝れない理由」と「関わり方」のヒント
乳児期(0~1歳)

🔹謝れない理由
・さわる、なめる、たたくなど、「五感で知ろう」とする行動が中心で、「いい/悪い」の基準がまだない
・「謝る」という言葉や概念を理解できる段階ではない
・「自己欲求」や「快・不快」が中心で、相手の気持ちを推測する力は未発達
関わり方のヒント
・子どもが安心して探索できる空間や安全な環境を整える
・優しい声かけやスキンシップで「安心感」と「信頼関係」を育む
・トラブルが起こる前に、危険や取り合いを減らす工夫(配置の工夫、代替案を示す)で、安全を確保する
・トラブル時は「びっくりしたね」「いやだったね」など、短い言葉で子どもの気持ちを代弁する
いい?悪い?は分からなくても、身近な大人の姿や声掛けを通して少しずつ感じ取っていく時期です。
\乳児期の謝れない理由と関わり方の詳細はコチラ/
幼児期(2~5歳)

🔹謝れない理由
・自分の気持ちが強く、言葉より感情が先に出る
・「悪いことをした」と理解する力がまだ弱い
・「ごめん」が自分の負けだと感じて抵抗する
関わり方のヒント
・遊びや日常で「ごめん」「ありがとう」を自然に経験できる場をつくる
・「気持ち」を言葉にするサポートをする(「今、貸したくなかったんだよね」など)
・自分にも気持ちがあるように、相手にも気持ちがあることを学ぶ機会を持つ
・無理に謝らせるよりも、気持ちを整理した後に伝えられるタイミングを待つ
📖 発達心理学の視点から
ピアジェ(Jean Piaget)は、子どもの道徳観は「他律道徳(たりつどうとく)」大人に言われるから守る段階から「自律道徳(じりつどうとく)」自分の内側から守りたいと思う段階へ徐々に発達すると示しました。おおむね5〜9歳は「他律道徳」の時期で、謝罪を「大人に言われるからするもの」として体験します。「なぜ謝らなければいけないのか」が腹落ちしにくいのは、意地悪でもわがままでもなく、この時期の発達段階によるものです。
出典:ピアジェ(Jean Piaget). 道徳的判断の発達(The Moral Judgment of the Child). 1932年 / Hammond, S.I. (2014). Frontiers in Psychology, 5, 759.
ごめんねって言いたいけど、なんだか負けた気がしてしまう…だからぜったい言わない!と思う時期。まだ自分の気持ちの方が強いんです。
\幼児期の謝れない理由と関わり方の詳細はコチラ/
学童期(6~12歳)

🔹謝れない理由
・プライドや友達関係を気にする気持ちが強くなる
・謝る=自分の非を全面的に認めること、と感じやすい
・失敗を叱られるのが怖くて口を閉ざす
関わり方のヒント
・「悪い子」と決めず、「行動」に焦点を当てて伝える
・状況や気持ちを言語化し、一緒に整理していく
・「謝ることは関係をよくする第一歩だよ」と意味を整理してあげる
・親が謝る姿を見せることで「謝っても大丈夫」という安心感を育む
心の奥で「ごめんね」って思ってても、みんなの前では恥ずかしい。そんな時期だからこそ、大人の支えや視点が効いてきます。
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思春期(13歳~)

🔹謝れない理由
・自分の立場や意見を強く主張したい時期
・謝罪が「親や先生に従うこと」と感じて反発する
・本心を言葉にするのが恥ずかしく、防衛的になる
関わり方のヒント
・頭ごなしに「謝りなさい」と言わず、まず気持ちを聴く
・「言葉」だけでなく行動で気持ちを表すことも一つの方法と伝える
・親が「あなたを信じているよ」という姿勢を見せることで、自分から謝れる力を後押しする
📖 発達心理学の視点から
エリクソン(Erik H. Erikson)によれば、思春期は「アイデンティティ対 役割混乱」の段階です。「自分が何者か」を確立しようとする強い内的ドライブがあり、謝ること=自分の弱さや非を公に認めることと感じやすい時期。この抵抗感は性格や反抗心の問題ではなく、自分を守ろうとする発達上の自然な反応です。
出典:エリクソン(Erik H. Erikson). アイデンティティ ─ 青年と危機(Identity: Youth and Crisis). 1968年. W.W. Norton / Branje et al. (2021). Journal of Research on Adolescence, 31(4).
プライドもあり、言葉で伝えるより、態度で示す方が楽な時期。そんなお互いの気持ちを感じ取る力もちゃんと育ってくる時期です。
\思春期の謝れない理由と関わり方の詳細はコチラ/
まとめ:焦らず、子どもと一緒に体験を重ねましょう

人が育つには、たくさんの経験と失敗を繰り返すことが必要です。
- うまくいかなくても
- トラブルが起きても
寄り添う大人がいることで、子どもは謝る力やトラブルを乗り越える方法を少しずつ学んでいきます。
だから無理に言わせなくても大丈夫。安心して謝れる体験を一緒に重ねたり、時に大人が謝る姿を見せたりすることで、「謝ることは信頼を築く一歩」だと、ちゃんと理解していきます。
子どもが「まだ謝れない」のには意味があります。どうか焦らず発達のステップを理解してあげましょう。今の子どもに寄り添いながら関わることこそが、心の成長にしっかりつながっていきます。今日も一緒に、子どもの心を支えていきましょう。
📚 参考文献
- ピアジェ(Jean Piaget). 道徳的判断の発達(The Moral Judgment of the Child). 1932年. Kegan Paul.
- エリクソン(Erik H. Erikson). アイデンティティ ─ 青年と危機(Identity: Youth and Crisis). 1968年. W.W. Norton.
- Hammond, S.I. (2014). 子どもの向社会的行動とピアジェ発達理論(Children's early helping in action: Piagetian developmental theory and early prosocial behavior). Frontiers in Psychology, 5, 759. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4102168/
- Branje, S., de Moor, E.L., Spitzer, J., & Becht, A.I. (2021). 青年期のアイデンティティ発達のダイナミクス:10年間のレビュー(Dynamics of Identity Development in Adolescence: A Decade in Review). Journal of Research on Adolescence, 31(4), 908–927. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9298910/
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