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幼児期

【幼児期】「友達と遊ばない」どうしたらいい?|一人遊びの価値と親の関わり方

1人で大きな穴に入って遊ぶ幼児

「うちの子、友達と遊ばないけど大丈夫かな?」
保育園や公園で他の子どもが仲良く遊んでいるのを見ると、
つい、わが子の姿と比べてしまうことがありますよね。

でも結論からお伝えすると、
幼児期に友達と遊ばないことは必ずしも問題ではありません
むしろ「一人遊びの時期」は、
将来の社会性や人間関係を育てる大切なステップなのです。

「私のせいかも」と自分を責めなくても大丈夫。
「子どもの力を信じて関わっていく」視点があれば、
その子自身のタイミングで「友達と関わって遊ぶ」姿につながっていきます。

この記事では

・幼児期の「遊び」がどう発達していくのか
・一人遊びが持つ大切な意味
・「友達と遊ぶ」につながる関わり方
・今日から実践できる関わり方のヒント
を、発達心理の視点を踏まえ保育士の経験をもとにわかりやすく解説します。

「一人遊び」は発達の遅れではなく、大切なステップ

子どもの遊びには発達段階があります。
1932年、アメリカの発達心理学者ミルドレッド・パーテンが示した研究(※1)では、遊びは「一人遊び」から始まり、少しずつ他者との関わりへ広がっていくことが明らかになっています。

つまり、一人で夢中になって遊ぶ時間は 心と体を育てる大切な基盤なのです。
そこから自然に「人と一緒にいる楽しさ」へと関心が広がっていくのです。

年齢ごとの「遊びの発達段階」(0~5歳)

子どもの遊びには、発達の流れがあります。年齢はあくまで目安ですが、大きく分けると次のようなステップがあります。

遊びの発達段階(0~5歳)

一人遊び(ソリタリー・プレイ)0〜2歳ごろ
赤ちゃんの時期は、おもちゃの感触や、舐めたり、ただじっと見つめたり、徐々に簡単な操作をしながら「自分の世界」を楽しむ段階です。親と一緒に遊ぶこともありますが、基本は一人での遊びが中心。この時期の一人遊びは集中力や探究心を育む大切な経験です。

並行遊び(パラレル・プレイ)2〜3歳ごろ
友達の隣で同じような遊びをしますが、会話や協力はまだ少ない段階です。隣にいる相手の存在を意識し始める時期で、一緒にいる心地よさが、人への興味が芽生えるきっかけになります。

連合遊び(アソシエイティブ・プレイ)3〜4歳ごろ
「貸して」「どうぞ」といったやりとりが増えてきます。おもちゃを共有したり簡単な会話を交わしたりしますが、ルールや役割はまだあいまいです。協同遊びに移る前の大切な過渡期で、関わり方を少しずつ学んでいく段階です。

協同遊び(コオペレイティブ・プレイ)4〜5歳ごろ
ごっこ遊びやルールのある遊びが成立し、役割を分け合って遊べるようになります。お医者さん役と患者さん役に分かれたり、鬼ごっこで鬼と逃げる子に分かれたりすることで、協力や交渉の力が育ち、社会性が大きく伸びていきます。

「遊びの発達」では、次の段階に行っても”今までの遊びが完全に無くなる”わけではなく“重なりながら広がる”ものです。たとえば 1978年の縦断研究でも、幼児がグループ遊びを増やしていく一方で、一人遊び(ソリタリー・プレイ)も完全に消えるわけではないことが報告されています。

※1 スミス、ピーター K.(Smith, Peter K.)

「一人遊び」が育てるチカラ

「一人で遊んでばかりで心配」という声をよく聞きますが、一人遊びには大きな意味があります。

一人遊びが育てるチカラ

  • 想像力を育む
     ごっこ遊びを一人で楽しむとき、子どもは役やストーリーを自分で作り出しています。これは将来、友達と遊ぶときに「役割を分け合う」力の土台になります。
  • 自己調整力を高める
     思い通りにいかないときに工夫したり、我慢したりする経験を積んでいます。
  • 集中力や問題解決力を育てる
     試行錯誤しながら積み木を積む、絵を描くなど、自分で考える力が伸びます。
  • 興味や個性を確立する
     夢中になった遊びは、将来友達に「こうして遊ぼうよ」と提案するきっかけにもなります。

     ※2 パーテン(Parten)「遊びの分類」より

また、能力が高めに発揮されている子どもたちにおいては、協同遊びなどの社会的な遊びが増えても、一人の時間を含む遊びや、想像的な遊びが並行して続くというデータもありました。

※3 ホープ・E・ ウィルソン(Hope E. Wilson)

親子の関わりは”友達への興味”の原点

一人遊びや並行遊びの時期は、将来の「友達と遊ぶ」につながる準備期間です。その時期の親とのやりとりで「人と一緒にいるのは楽しい」と感じられると、関心は少しずつ友達の遊びや友達自身にも広がっていきます。

親子の関わりが育てる「人とつながる」5つの力

共同注意
 一緒に物を見たり、指さした方向を見る。喜びや驚きを共有することで、「人と一緒にいる楽しさ」を体験します。

応答的なやりとり
 子どもの声や仕草にすぐ反応することで、「人は自分に応えてくれる」と感じ、安心感と自己肯定感が育ちます。

・模倣する力と広がり(拡張)
 親が子どもの遊びを真似することで「分かってもらえた」と感じつつ、大人がそこに少し変化を加えることで新しい遊び方にも挑戦できます。

安心できる繰り返し
 同じ遊びを何度も一緒に楽しむことで、子どもは「自分のやりたいことを尊重してもらえる」と実感します。

役割の芽生え
 「順番こ」「渡す・受け取る」など簡単な役割分担を親子で体験することで、協力する力の基礎が育ちます。

「遊びが発展する」具体的な声かけ例

「子どもの遊びを発展させる」というと難しく感じられるかもしれませんが、ちょっとしたコツと声掛けのタイミングを知ることで、子どもの成長を促すことができます。

「赤いブロックで遊んでるんだね。面白そう!」(観察)
子どものしていることを言葉にして伝える。
評価ではなく“気づきを共有”するイメージ。
  ⬇️
「どんなところがおもしろいの?一緒にやってみようかな」(共同)
興味を尊重しつつ、子どもの世界に少し入る。
  ⬇️
「一緒にできたね!」何度か繰り返す(共感
成功や楽しさを共有する。これを何度も繰り返すだけでもOK。
  ⬇️
「今度は、こんな風にするのはどう?」(少し広げる
慣れてきたら少しだけ新しい提案をする。
※数日~数週間かけて繰り返した後、誘うのもいいですね。

大切なのは「観察 → 共感 → 少し広げる」というシンプルな流れです。
この積み重ねによって、子どもは「人と一緒に遊ぶって楽しいんだ」と感じられるようになります。

このようなちょっとした働きかけは、子どもの遊びをより社会的・創造的なものにする可能性があるとされています。

※4 マイケル・ヨグマン(Michael Yogman)など

MIMAポイント!
子どもの遊びで興味を広げる援助は、保育の中でもよく行われています。
けれど、それは大人のリズムで無理に誘うことではなく、子どもが十分に遊んだあとや、自分から関心を広げられるタイミングを見計らうことも大切なポイントです。 
以下に、現場での実体験を「観察 → 共感 → 少し広げる」の流れで紹介します。

【Yちゃん(3歳児クラス)の一人遊び】
ある親御さんから「3歳になっても友達と遊ばないので気になる」という相談を受けました。

観察してみると、Yちゃんはままごとが好きで、大勢の友達の中に入るものの、会話はほとんどなく、一人でおもちゃを持ち歩いたり座って遊んだりしていました。独り言をつぶやきながら夢中になっている姿は、とても楽しそうでした。私が声をかけると一瞬こちらを見ますが、すぐに遊びに戻っていきます。時には、何度も声をかけると迷惑そうな表情を見せることもありました。

そこで私は、「楽しそうだね」「○○しているんだね」と、短い言葉に笑顔を添える
にとどめました。すると、次第にYちゃんは自分の遊びを紹介してくれるようになり、そこから私も一緒の遊びに入るようになりました。その後は、私と一緒に友達へ野菜のおもちゃを渡すなど、少しずつ関わる人も広がっていきました。

【Yちゃんの ~その後~ 】
1年後、4歳児クラスになったYちゃん。
気の合う友達ができ、いつも一緒にままごとを楽しむようになりました。
今では、保育士が介入しなくても、役割を分け合いながら夢中で遊ぶ姿が見られます。

また、遊びだけでなく生活場面でも「一緒に手を洗おう!」と自分から誘えるようにもなりました。
友達と一緒に過ごす心地よさを感じられるようになったYちゃん。
その表情はグッと明るさを増し、毎日の園生活を楽しんでいるようです。

大人から見ると「ずっと一人で遊んでいる…大丈夫かな?」と心配に映る場面も、子どもにとっては自分の世界に浸り、充足感を味わっている大切な時間です。友達と遊びたいと思う気持ちや、他者を受け入れるリズムは、一人ひとり違います。その子のペースを信じて待つことが大切だと、改めて実感しました。

発達に関する研究でも、「静かな遊びに集中している子どもは、自分の遊びに満足したあとに他者との関わりを広げていくことが多い」と示されています(※5)。

「ずっと一人遊び…」相談してみてもいいサイン

「一人遊び」をする子の大部分は、個々のリズムで遊びが発達していくため心配はいりませんが、次のような場合は専門家への相談を検討してみましょう。

目線や共有があまりない
3歳を過ぎても、目を合わせて一緒に何かを見る、指差しやジェスチャーで共有する行動がほとんどない。
※2歳前後では目線や共有の行動に個人差が大きく、完全に見られなくても必ずしも心配ではありません。

・「ごっこ遊び」や「模倣遊び」がほとんどない
おままごとや人形遊び、簡単な真似遊びが全く見られない。

名前を呼んでも反応が少ない
呼びかけに気づかないことが多い。

注目して欲しいものが伝わりにくい
大人が指差してもその方向に注目せず、差している指を毎回注視したり、視線が散ったり、あるいは特定の物ばかり見ている。

遊びや環境へのこだわりが強い
遊び方や順序に強いこだわりがあり、少しの変化に泣いたり怒ったりする。

1人ひとりの発達は、個人差や個性が大きいものです。ここに当てはまるからといって問題だと決まるわけではありません。ですが、気になるときは一人で悩まず、園の先生や保健センターなど、専門家に話をするだけでも安心できたり小さなヒントが得られます。


【相談できる場所は?】
以下の記事に、子育て相談ができる場所の詳細が載っています。気軽に相談してみましょう。

📌《いつでも使える!》2025年最新:子育て支援ガイド~2026年開始「こども誰でも通園制度」についても徹底解説~
📌【最新】2025年 全国「子育て(生活)相談窓口」~LINE・チャット相談も!使える制度や給付金についても紹介~

よくある質問

Q:一人遊びが長いと、将来困りますか?
A:いいえ。その子にとって集中して遊びたいものがあることは、とてもいいことです。一人遊びは様々な力を育てます。親子の関わりがあれば安心してください。就園し、集団生活の中に入ってからでも遅くはないので、心配しなくて大丈夫です。

Q:友達と遊ばせるために、何から始めたらいいですか?
A:無理に「遊ばせよう」と思わなくても大丈夫。まずは、子どもの
・やりたいことってなに?
・なにがおもしろいんだろう?
その視点でみてみましょう。面白さに共感し、一緒に遊ぶ関わりをまずは大切に。
身近な人との関わりから、「一緒に遊ぶのはたのしい!」という感覚が友達への興味や遊びにつながっていきます。

Q:忙しくて十分に子どもに関われない…
A:短時間でも大丈夫。5〜10分の“集中した関わり”の積み重ねが子どもの安心につながります。短くてもいいので、視線をしっかり合わせて関わることを意識しましょう。

まとめ

子どもが友達と遊ばないことは、決して「問題」ではありません。

幼児期の「一人遊び」は、集中力・想像力・自己調整力・社会性の土台を育てる大切な時間です。「友達と遊ばせなきゃ…」と焦らなくても大丈夫。
今の遊びを大切に受け止めることが、未来の友達との関わりにもつながっていきます。

子どもにとって、夢中になって遊ぶ瞬間は宝物です。
今の子どもの興味やペースを尊重しながら、一緒に遊びを育てていきましょう

※1 スミス、ピーター K.(1978)
就学前児童の社会参加に関する縦断的研究:孤独な遊びと並行遊びの再検討
米教育資源情報センター(Education Resources Information Center)

※2 パーテン, MB (1932)
就学前の児童の社会参加(Social participation among pre-school children.)」
アメリカ心理学会(APA)

※3 ホープ・E・ ウィルソン(2015) 
能力の高い子どもと通常の子どもの遊び行動と学習センターの選択パターン
米セージ・パブリッシング社(Sage Journals)

※4 マイケル・ヨグマンら (2018).
遊びの力:幼児の発達を促進する小児科の役割 (The Power of Play: A Pediatric Role in Enhancing Development in Young Children. )」
American Academy of Pediatrics

※5 淡野 将太(2009)
ひとりで遊んでいる子どもの社会的行動特徴―静的遊びについて―
ひとりで遊んでいる子どもはどのように遊びを変化させるのか?
Human Developmental Research

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    保育士 MIMA

    大学で福祉全般を学び、児童指導員や保育士歴18年目、3児の母。 学生時代からキャンプの運営やグループワークを実践し、ボランティア活動では、障害のある方や少年院で生活する子どもたちなど、大人から子どもまで幅広い人たちと交流。失敗を重ねながらも『一人ひとりが輝くために大切なこと』を学び、実践。”ベテラン風新人”をコンセプトに、学ぶ姿勢を持ち続けたい!と、現在も保育園保育士として子どもたちに向き合い続けています。