この記事は、大切な人と読んでください
赤ちゃんが生まれると、
家族みんなが、大きな変化の連続です。
ママもパパも、それぞれの場所で精一杯頑張っています。
でも──それなのに、
気づけば、会話が減ったり、時にすれ違ってしまうことがあります。
そんな時は、
相手を「責める言葉」ではなく、お互いの気持ちが通じ合う「つながる言葉」が必要です。
産後ママの状況をデータで知ろう
まずは、ママの身体と心の現実から見てみましょう。
以前の記事(👉【産後】データでみる「産後ママの現実」寝ないで頑張るあなたへのメッセージ)に、より詳しいデータが載っています。
産後ママに起きる「3つの大きな変化」
・産後ママの平均睡眠時間は4〜5時間です。
しかも連続睡眠ではなく、24時間赤ちゃんのお世話の合間で休む”細切れの睡眠”が続き、深い眠りが全く取れない日々が続きます。
・産後うつのリスクは15〜20%(約5人に1人)
産後すぐの”気分の落ち込み”を「マタニティーブルー」と言います。「産後うつ」は、その後にも引き続く睡眠不足や不安や孤立、家庭環境や夫婦の関係不調などが要因といわれています。また、初産の人(1人目育児の人)に起こりやすい傾向があるともいわれています。5人に1人は、決して少ない数字ではありません。誰にでも起こりうるのが「産後うつ」なのです。
・ホルモンバランスの急変
エストロゲン・オキシトシンなどによって涙もろくなったり、気持ちが言葉にできなくなったりするのも、ごく自然なことで、多くの人が経験します。
「心のすれ違い」を修正する第一歩:パートナーの状況を想像しよう
目の前の育児で、つい自分の状況に気持ちが傾きがちですが、そんな時こそパートナーがどんな想いでいるのか、少し想像してみましょう。
「パートナーの状況」を想像してみよう
・「手伝いたいけど、何をしたらいいのかわからない」と戸惑っているのかも。
・ママが最近無口なので、「何か怒っているのかな?」と不安になっているのかも。
・「家族が増えたから、仕事を頑張らないと!」「弱音なんて吐いていられない。」と使命感でいっぱいなのかも。
・結婚までは1番大切に想われていたけれど、産後は赤ちゃんが最優先でちょっと寂しいのかも。
「産後ママの状況」を想像してみよう
・1日中、授乳やオムツ替え、抱っこで自分の時間がほとんどなく、息つく暇がなさそう。
・無口なのは、毎日十分に眠れていないから、体力的にも精神的にも限界に近いのかも。
・イライラしているのは、産後のホルモンの影響で感情コントロールがしにくくなっているのかも。
・家事もやらなければいけないと思って、自分の体を休める時間がないのかも。
お互いの立場を想像すると、互いに”自分の立場から必死に頑張っている”姿が見えてくるのではないでしょうか?
実は、どちらも「手を抜いている」のではなく、それぞれの場所で全力を尽くしているのです。まず「相手も頑張っている」という前提を持つことが、心のすれ違いを修正する第一歩になります。
👆 MIMAポイント!
自分が”誰かに話しを聞いてほしい”時、あなたならどうしますか?
私が赤ちゃん育児をしていた頃、恥ずかしながらイライラが募り、夫に対してもどこか冷たい態度をとってしまっていました。でもある日、ふとした思いから勇気を出して「最近、仕事どう?」と声をかけたのです。たったその一言で、相手の表情がふっと和らぎ、少しずつ「会話」が生まれ、「互いを思いやる空気」が戻ってくるのを感じました。
この記事を執筆するきっかけとなった体験談は
📌ほっとコラム「【産後夫婦】わたしのすれ違い体験と小さな気づき」で詳しく紹介しています。
「心が通う会話」のコツ:”責めずに伝える”方法
産後の生活は、夫婦ともに初めてのことばかり。
お互い必死なのに、思ったように分かり合えず、すれ違いが増えてしまうこともあります。でも、ちょっとした会話の工夫で、関係は驚くほど変わります。
ここでは、心理学やコミュニケーションの知見をもとに、実践しやすい「会話のコツ」をご紹介します。
1.「最初のひとこと」で ”相手の状況”を聞く
自分の話をいきなり切り出すと、相手が忙しい時には受け止めてもらえないことがあります。お互いが必死な状態の時ほど、このすれ違いは大きくなります。
❌「ねえ、どうして手伝ってくれないの!」
⭕「今ちょっといい?手伝ってほしいことがあるんだよ」
まずは相手の状況をたずねる”一言”から始めると、相手は「自分を気にかけてくれている」と感じ、心がほどけるような安心感が生まれます。
心理学的にも、「人は自分を理解してくれる相手に協力的になる」傾向があります。
※1 カーネギーの『人を動かす』傾聴理論
2.相手の状況を聞くときは「気持ち」によりそう
相手の状況を聞くというのは、“言い分”を主張し合ったり、感情をぶつけ合うことではなく、ありのままの状況や、その時の“気持ち”を受け止め合うことです。「正しさ」や「優劣」をつけることではないので気をつけましょう。
❌「それより、私の方がずっと大変だよ」
❌「でも俺だって、仕事が忙しい」
⭕「そうなんだ…仕事が大変なんだね。」
⭕「寝られないのは、本当にきついよね」
「相手の話を聞いて、相手の気持ちを理解しようとする姿勢が、信頼を築くポイントです。
3. 「I(アイ)メッセージ」で伝える
“あなた”を主語にした言葉は、相手を責める印象を与えやすく、相手の防御的な反応を招きます。
❌「なんで(あなたは)手伝ってくれないの?」
⭕「私、今日は2時間しか寝てなくて…少し休めたら助かるな。」
「Iメッセージ」とは、自分の気持ちや状況を、”わたし”を主語にして伝える方法です。
これによって、相手は責められていると感じにくくなり、「どうやって助けよう?」と考えやすくなります。
※2 トマス・ゴードン「I(アイ)メッセージ」
このように
「相手の状況に共感して聴く」+「I(アイ)メッセージで要件を伝える」の順で話すと、相手の受け入れやすさを高め、心が通うコミュニケーションにつながります。
※3 ポジティブ心理学
理想のパートナーシップを築く2つの方法
では、このようなすれ違いがそもそも起きないようにするためにはどうしたらいいのでしょう。また、更に
協力的な関係をパートナーと築くためにできることを紹介します。
「毎日のできごと」を報告し合おう
・「赤ちゃん、今は寝てるけど、昼間は何やっても泣きやまなくってね」
・「寝てる間に、この部屋きれいにしたよ」
・「いつもより早く出勤したら、仕事がはかどったよ」
など、今日起きた出来事を報告し合いましょう。
毎日は難しくても、週末リラックスした中で、お互いの頑張りを認め合う瞬間を作るのもいいでしょう。
「小さな感謝」を言葉にしよう
感謝を伝えることは、相手の協力意欲を高め、夫婦の満足度アップに繋がります(※4)。心理学的には、人は「自分を理解してくれる相手」に対して協力的になるともいわれています。
相手の話を聞きながら、
・「それは大変だったね、ありがとう」
・「がんばってきてくれたんだね」など
感謝や労いの言葉を掛け合うことで、互いの頑張りを認め合い、気持ちが満たされ、より良い関係を築くことができます。
うまくいかないときの解決法
互いの理解を深めたいと思っても、うまくいかない時もあるでしょう。そんな時に意識して欲しいことが2つあります。
1.「正しさ」や「勝ち負け」にこだわらない。
2.「責め合う」ことより、問題解決や目標のために「自分ができること」に目を向けましょう。
※5 ソリューションフォーカスト・アプローチ
意見の食い違う時には、「どちらが正しい」とか「どちらがより大変」とか感情的な衝突に終わるのではなく、「どうすれば今より良くなるか」をお互いのゴール(目標)にし、自分にできることから考え、話し合っていきましょう。
解決志向の会話は、感情的な衝突を減らします。
一緒に歩む「子育てのパートナー」になるために
子育ては、”どちらかが負担を背負い、もう一方が手伝う”ものではなく、二人が同じ方向や目標を見据え、ともに歩む「共同プロジェクト」です。
大切なのは、互いの努力や状況を認め合い、「子どもと家族の未来」という共通の目的に向かって協力して進んでいくこと。それには、家事や育児を分担するだけでなく、心の面でも支え合い、喜びや不安を共有できる存在になっていくということです。
・赤ちゃんのお世話で精一杯な中、パートナーにも配慮ができた
・子育てに忙しいのに、仕事のことを気にかけてくれた
・うまく動けない自分に、責めずに伝えてくれた
・感情ではなく、状況を共有してくれたことで理解し合えた
そんな小さな積み重ねが、互いを理解し、支え合いながら家族を育てていく「子育てのパートナー」へと関係を育てていきます。
「このページを、大切な人に伝えたい」とふと思ったあなたへ
あなたは、自分の”しんどさ”を乗り越え、”相手を思いやる力”を持ったステキな人です。あなたの家族へのあたたかい思いを、一緒に伝えていきましょう。
「伝えたいけど、伝わらないだろうな」と考えたあなたへ
あなたは、誰よりも責任感のある頑張り屋さんです。
でも子育ては、あなたが一人でがんばって抱えていくものではありません。
是非、パートナーや身近な人を信じて、少しずつ頼ってみましょう。
ほんの小さな歩み寄りは、あなたの心を軽くするだけでなく、きっと子どもの成長や家族の絆をより豊かにしてくれることでしょう。
📖 参考文献
※1 カーネギー(1936)
「人を動かす(How to Win Friends and Influence People)」
Simon & Schuster
※2トマス・ゴードン(1970)
「I(アイ)メッセージ技法」
Gordon Training International※3 マーティン・セリグマン
「ポジティブ心理学:私史」
APA:アメリカ心理学会会長就任式挨拶から(1998)※4 エモンズ.R.Aほか (2003)
「感謝の評価」
APA(アメリカ心理学会)※5 「ソリューションフォーカスト・アプローチ」(Solution-Focused Approach)は、1970年代後半に米国のBrief Family Therapy Centerでスティーブ・デ・シェイザーとインスー・キム・バーグらによって考案された心理療法の理論。(参考:Steve de Shazer et al., Keys to Solution in Brief Therapy, 2013)