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思春期

【思春期】今から“やり直せる”親子関係の育て方|遅くない!科学的根拠と実践アプローチ

希望を持ち、助け合う親子

🌱後悔しないで!“思春期からの再出発”を

子どもが思春期を迎えたとき、
「もっとこうしておけばよかった」
「小さいころにちゃんと関わってあげられなかったな」
そんな後悔が、ふと胸をよぎることはありませんか?

でも、どうか知っておいて欲しいのです。
思春期は「もう遅い」どころか、心と脳が大きく変化する再出発のチャンスなのです!

この時期は、目まぐるしい体と心の成長期。
その大きな変化があるからこそ
「育て直し」が効く絶好のタイミングともいえるのです。

この記事では

・思春期に「やり直しがきく」理由と根拠
・過去の経験があっても、子ども自身が“乗り越える力”を育てる方法
・今からできる、親子の”関係づくり”のための具体的なかかわり方

について、最新の研究や発達心理の視点を交え、思春期の子どもに向き合ってきた保育士が解説します。

思春期の位置づけと可能性

アメリカ合衆国の最も権威ある研究組織群の一つ、NAM(National Academy of Medicine)の報告書『The Promise of Adolescence(思春期の約束)』(※1)によれば、

「思春期前期から20代半ば」は

・身体・認知・情緒・社会性すべてが急速に変化する「最大の可塑性を持つ発達期間」と位置づけています。
幼少期の経験が影響するものの、思春期の期間での「回復」や、未来を作る「再構築」の可能性が大いにあることも示しています。
主体的な成長期であることを明確にしています。

MIMAポイント!

小さい頃の経験や関わりが、子どもの人格形成や態度などに影響する部分は確かにあります。しかし、思春期の「子ども自身が考え、学ぶ、主体性」を大切にする関わりを大人側が意識することで、望ましい未来に導いていくことができる可能性を教えてくれています。

思春期の脳 :生物学的に「やり直せる」3つの理由

1️⃣脳の前頭前野を中心にシナプスの刈り込み(剪定)が行われる(※2)
幼少期には、神経細胞をつなぐ「シナプス」が過剰に形成されますが、思春期には使われない不要な回路が選別され、削除され、効率のよい情報処理ネットワークを構築します。
前頭前野は、「判断力」「感情の制御」「未来の見通し」「社会的スキル」
といった高次の認知機能を育てています。


2️⃣白質(ミエリン)の増加(※3)
電気信号の伝達を高速化し、特に前頭前野とのつながりを中心に増加します。
情報伝達がよりスムーズかつ迅速になり、効率のよい思考や行動が可能になりますが、20歳にかけてゆっくり進行するため、思春期の途中では未熟さや感情の不安定さも見られます。

3️⃣神経伝達物質(GABA・グルタミン酸など)のバランス変化(※4)
脳内の「神経伝達物質」と呼ばれる化学物質の分泌バランスや受容体の感受性が大きく変わっていきます。思春期の初期は神経伝達物質の抑制系(GABA)より興奮系(グルタミン酸)が優位なため、感情の起伏や衝動性の一因になっています。
思春期進むにつれ、抑制系(GABA)の働きが強まり、興奮しやすかった脳が徐々に落ち着きを取り戻していくことが分かっています。

思春期にプラスの影響を与える重要な要素  

  ・親の関わり方
  ・家庭の雰囲気
  ・日々の対話や接し方 などです。以降で詳しく解説します。

MIMAポイント!

思春期の子どもたちの脳は、まさに「作り直し」の真っ最中。柔軟で変化しやすいこの時期は、
大人の関わり次第で、脳の働きそのものに良い影響を与えることができる

と、科学的にも示されています。だからこそ、たとえ今まで「うまく関われなかった…」と感じていても、「今からの関わり」が”遅くない!”と言えるのです。また、そのように気づけたことが、ステキだと思います。

発達心理とアイデンティティ形成 —— 子どもは“自ら育つ存在”

【発達心理学者エリクソンは】
思春期を「アイデンティティ vs 役割の混乱」の時期としています。
この時期、子どもたちは「自分はどんな存在か?」を迷いながら問い直し、模索しながら少しずつ“自分らしさ”を形づくるのだと提唱しました。

アイデンティティ形成【自分らしさを形づくるプロセス】とは

親や社会が一方的に教え込むものではなく、子ども自身が主体的に考え、選び取ることによって起こります。

MIMAポイント!
だからこそ、親にできるのは「子どもの自主性」と「子どもの選択」を“支える”ことです。
問い直しを妨げず肯定し安心して挑戦できる環境をつくることが大切です。

社会資源とのつながりと重要性 —— 心を支える援助

米国アカデミーNAM(National Academy of Medicine)の報告では、思春期の成長は「個人の努力」だけでは完結しないと強調されています。

脳の発達や心理的成長を方向づける大きな鍵は、「家庭」「学校」「地域の支援」です。

MIMAポイント!

米国NAM(National Academy of Medicine)の報告によると、必要な時にこのような社会資源主体的にアクセスできることが、子どもの健全な育成につながることを明らかにしています。
反対に、望まずして社会資源につながった場合は、子どもの反発を招くなど、反対の効果を生むことがあるとも明記されています。

どんな時でも、子ども自身の意思を大切にしていくことこそが重要だと感じました。

子どもの「心理的安全性を育む」親のかかわり方


では、「子どもが主体的に考え」「子どもが自分で選択していく」ためには、どうしたらいいのでしょうか?

子どもには、想定外のことが起きたり、思い通りにいかないことや、時に大きな失敗をしてしまうこともあります。そんな時に、「相談できる存在」として身近な友達だったり、最後は親が「受け止め役」になることが大切です。自分が選択していく中で、困ったときでも、頼れる場所や人がいることが、「心理的安全性(いわば”心理的な安心感”)」を育むことにつながります。

ここが違う!「心理的安全性」が子どもに与える2つの力

自分で考え、行動し、うまくいかなかったときに、気持ちを支えてくれる存在がいると思えたり、支えてもらえる環境が用意されていることで「心理的安全性」を育んでいけることが分かりました。では、この「心理的安全性」を持った子どもが手に入れる力とはどんなことでしょうか。

「心理的安全性」を持った子どもが手に入れる力

1️⃣過去の傷や未成熟な部分を乗り越える力
たとえ幼い頃の関わりにうまくいかなかった部分があったとしても、思春期にはそれを乗り越えていく柔軟さがあります。心理的に安心できる関係があることで、「自分は変われる」と感じられるようになります。

2️⃣自分で人生を前向きに切り開いていく力(=レジリエンス)
レジリエンスとは、困難を乗り越える“心のしなやかさ”のこと。
「心理的安全性」のある環境は、子どもが『自分で選んだ』という実感を持つことで、たとえ失敗しても、そこから学び、『前向きに進む』力が育ちます。

「育てなおし」の実践アプローチ

思春期は、過去の関わりを悔やむよりも、“これからの対話と信頼の積み重ね”が未来を変える力になります。
ここでは、保育士としての経験と、科学的根拠に基づいた「今すぐできる親の関わり方」をご紹介します。

「I-メッセージ」で、気持ちを非攻撃的に伝える

思春期の子どもは、自分の感情や行動に過敏で、「責められる」と感じた瞬間に心を閉ざしてしまうこともあります。そこで効果的なのが、「I(アイ)-メッセージ」という伝え方です。

✖️ NG例:

「なんでそんなことしたの?」
「何回言ったら分かるの?」

OK例:

「ママは悲しかったよ」
「あなたのことが心配で、不安だったんだ」

このように、「自分の感情」を主語にして伝えることで、相手を非難せずに自分の気持ちを共有できます。これは、心理的安全性を守るコミュニケーションとして、近年注目されています。

(もっと詳しく👉【ペアレント】絆を深める声掛け「I(アイ)メッセージ」~子どもの心に届く伝え方~

✅2. 小さな「承認の積み重ね」で、自己肯定感を育てる

「ありがとう」
「助かったよ」
「気づいてくれて嬉しかった」


──こうした何気ない言葉こそが、思春期の子どもにとって「心の栄養」になります。

自己肯定感は、大きな成功体験よりも、日常の中の小さな承認の積み重ねで育まれることが研究からも明らかになっています。

MIMAポイント!
特に思春期は、他者からの承認によって「自分の価値」を確認したい時期。
親からのさりげない一言が、驚くほど深く心に届くこともあります。

✅3. 「自分で選ぶ」経験と、それが『認められる』経験で、自己決定力と自立心を育む

思春期の子どもたちは、「自分で決めたい」「自分でやりたい」という気持ちがどんどん強くなっていきます。
この時期に親がすべきことは、「干渉」ではなく「信頼して任せること」

  • 服を選ぶ
  • 勉強の計画を自分で立てる
  • 約束を一緒に決める など

もちろん、うまくいかないこともあります。失敗することもあるでしょう。
でも、それこそが学びであり、「自分の行動に責任を持つ力=自立心」につながっていきます。

この考え方は、心理学の自己決定理論(Self-Determination Theory)」にも基づいています。
「選択肢がある」「自分で決めた」と感じる経験は、人のモチベーションと健全な成長を支えることが科学的にも証明されています(※5)。

子どもと歩む「再構築ストーリー」 —— 幼少期を乗り越える力

たとえ過去に十分な関わりができなかったとしても、思春期の子どもに「もう無理」と決めなくても大丈夫です。彼らは、「自分がどんな人間か」を探しながら、自分で“今”を選んで生きていく力を持っています。
だからこそ、

・未来に希望を持てるような小さな目標を一緒に立てる
感謝や共感を育むやりとりを意識する
・「あなたの選んだことを応援してるよ」と伝える

そんな関わりの積み重ねが、子ども自身による“自己の再構築”を後押しします。
親が変わろうとする姿そのものが、子どもにとって最大のメッセージになります。

最後にあなたへのメッセージ

子育てに「やり直しができないかも…」と悩んではいませんか?
でも実際には、「思春期こそが“やり直しができる貴重な時間」です。

今からでもできることは、確かにあります!
一緒に小さなことから積み重ねていきましょう。

保育士として多くの思春期の子どもたちに接してきました。
中には、反発しながら、時に暴言を吐きながらも、ふとした瞬間に「先生…」と頼ってくることがよくありました。力を抜いて、一人の人間として向き合う中で、ゆっくり信頼は積み重なっていきました。

「今からでも遅くない」という言葉は、実践の中で私かつかんだ真実でもあります。
目の前にいる子どもを信じて、一緒に向き合っていきましょう。

※1 米国国立アカデミーズ(2019)
思春期の約束/すべての若者に機会を
(National Academies Press)

※2 リンダ・P・スペア(2013)
青年期の神経発達」(Spear, L. P. “Adolescent neurodevelopment.)
NIH(National Institutes of Health)

※3 アサト, M.R. 他(2010)
思春期における白質の発達:DTI研究
(Adolescence is a unique developmental period of rapid neurobiological change)
(米国国立医学図書館:NCBI)

※4 カバレロ, A.・ツェン, K.Y.(2016)
思春期における前頭前野成熟の制限因子としてのGABA機能
(Trends in Neurosciences/米国国立生物工学情報センター)

※5 デシ, E.L. & ライアン, R.M.(2000)
自己決定理論と内発的動機づけ、社会的発達、ウェルビーイングの促進
(Self‑Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well‑Being, American Psychologist
米国国立生物工学情報センター(PubMed)

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    保育士 MIMA

    大学で福祉全般を学び、児童指導員や保育士歴18年目、3児の母。 学生時代からキャンプの運営やグループワークを実践し、ボランティア活動では、障害のある方や少年院で生活する子どもたちなど、大人から子どもまで幅広い人たちと交流。失敗を重ねながらも『一人ひとりが輝くために大切なこと』を学び、実践。”ベテラン風新人”をコンセプトに、学ぶ姿勢を持ち続けたい!と、現在も保育園保育士として子どもたちに向き合い続けています。