この記事は「登園しぶりシリーズ」3歳児編です
「あぁ、今朝も泣いちゃった…」
「あれ?もう慣れたと思っていたのに…」
涙で訴えるわが子を引き剥がすように保育園に向かい
後ろ髪を引かれながら仕事へ……
そんな朝がしんどい時はありませんか?
「もしかして私の育て方が悪いの?」
「この子、園が合わないのかな?」
と心配を募らせてしまう日もあるかもしれません。
でも、大丈夫!
結論
3歳の登園しぶりは、心と脳が順調に育った証拠です。
・自我の芽生え
・言葉の発達
・新しい環境への不安
などから起こる、発達上ごく自然な反応です。
3歳の登園しぶりは"発達の当然"だった

分離不安のピークは0〜2歳…でも3歳にもある理由
ママと離れることへの不安(分離不安)は、一般的に1歳半頃がピークとされています。ですから、「3歳になったら卒業しているはず」と思いますよね。
ところが、この不安の消え方には大きな個人差があります。ある研究データでは、約7%の子どもが就学前期を通じて不安が高い状態のまま過ごすという結果も報告されています※1。
「3歳だから、分離不安は終わっているはず」というのは思い込み。入園という新しい環境の変化が重なることで、不安が再燃するのは十分ありえることですし、なかには6歳頃までゆっくり時間をかけて克服していく子もいるのです。
✅専門的な指標でも、「子どもは『ママは必ず戻ってくる』という体験を積み重ねることで、少しずつ学んでいく※2」とされています。
焦らず、体験を積み重ねていくことが何よりも大切です。
自己主張の急成長と「嫌だ!」の爆発
0〜2歳の子どもは「泣いて」訴えます。でも3歳は違います。
「行きたくない!」
「ヤダ!」
「ママといる!」
そう、言葉でまっすぐ訴えてくるのが3歳の特徴です。
2歳後半〜3歳は「語彙爆発」と呼ばれる時期で、使える言葉が急激に増えます。同時に「自分はこうしたい」という自己主張も急成長します。これは脳が育っている証拠。「嫌だ!」と言えるようになったこと自体は、成長のサインなのです。
✅ただ、気持ちをコントロールする前頭前野(ぜんとうぜんや:おでこの裏にある、我慢や判断を司る脳の部分)はまだ発達の途上。「行きたくない」という気持ちが芽生えても、「でも行ってみようかな」と切り替えることがまだ難しい時期です。
保育士の目線:3歳の「行きたくない」は何を意味するか
保育現場で19年間、数えきれないほどの「行きたくない…」を見てきました。
その子たちに共通していたのは、「保育園が嫌い」では決してなかったということ。
- 親と離れるときは泣けるけれど、しばらくすると夢中で遊んでいる
- 給食をモリモリ食べている
- 帰りは笑顔で帰れる
⇨それでも翌朝になるとまた泣けてしまう。
「じゃあなんで泣くの?」——その答えは次の子どもの本音セクションにあります。
子どもの本音を翻訳してみたら…
子どもの「行きたくない」を大人の言葉に翻訳してみると、こんな声が聞こえてきます。
💭 子どもの本音①
先が分からない不安
「ママとバイバイするのが怖いんだ。ちゃんと迎えに来てくれるか、ドキドキしちゃうんだもん」

💭 子どもの本音②
環境が変わることへの不安
「保育園の朝って、急にひとりになる感じがして心細いんだよ。まだ知らない子もいるし、疲れちゃうの」

💭 子どもの本音③
自分のリズムではない不快感
「眠たいのに"早く!早く!"って急かされると、イヤになっちゃう。もっとおうちにいたいよ」

保育園でよく見るのが、朝はいっぱい泣いているのに
お迎えのときには笑顔で「まだ遊びたい!」と言うお子さんです。
その姿からわかることは、朝泣くのは園に「行きたくない」わけではないんです。これから、お家の人と離れ、自分で保育園や幼稚園にいくための心の準備なんですよね。
いつまで続く?登園しぶりの「4つのパターン」と要注意サイン

①入園直後パターン(1〜2か月で落ち着く)
最も多いパターンで、新しい環境に慣れるまでのごく自然な反応です。
環境・先生・お友達すべてが初めてで、慣れるまで不安が出ます。
✅園の生活の流れやリズムが体に染み込み、「ここは安全な場所」「次は○○する時間だ」と体験できてくると、自然と落ち着いていきます。
②家庭からの気持ちが続くパターン(親に叱られた・嫌なことがあった)
朝、家で嫌なことがあった日や、前の晩に叱られたまま眠った翌朝。子どもがいつも以上にしがみついて、なかなか離れられないことはありませんか。これは「愛情を確かめるまで、その場を離れられない」という子どもの自然なサインです。
有名な愛着(アタッチメント)に関する研究※33でも、子どもは不安を感じたとき、親という「安全基地」に戻って安心を取り戻してから、また外の世界へ向かうことが示されています。
叱られた後にくっついて離れないのは、「まだ愛してもらえている?」を確かめようとしているから。その安心が満たされないまま登園になると、気持ちが宙ぶらりんのままで、しぶりが長引きやすくなります。
✅完璧な朝でなくていい。「大好きだよ」「行ってらっしゃい」のひと言が、子どもを送り出す力になります。
③緊張や不安の波パターン(GW明け・運動会後など)
元気よく登園し落ち着いてきたのに、またしぶりが始まった……という場合、GW明け・夏休み明け・運動会や発表会の直後など、生活リズムや環境が変わるタイミングが関わっていることがあります。
お休み中に心の充電が満タンになった証拠です。安心できる場所(家庭)があるからこそ、外の世界(園)に行くのに寂しくなったり、不安に思ったり、緊張してしまう。健全な甘えのサインでもあります。
決して「逆戻り」ではなく、子どもなりに「今の自分」と「園の生活」を調整しようとしている大切なステップです。。繰り返すたびに、子どもの適応力は確実に育っていきます。
④長期化パターン(要注意サインとは)
1か月以上激しく泣き続ける、お腹が痛い・頭が痛いなどの身体症状が出るといった場合は、園の先生や保健師・かかりつけ医に様子を伝え、相談してみましょう。
環境面(クラスの人間関係)や特性(感覚過敏・繊細さ)が関わっていることもあります。
✅「様子を見すぎる」よりも、その子に合ったサポートが必要なサインかもしれません。早めの相談が、親子の安心を助けます。
やりがちだけど…実は逆効果なNG対応3選

1.「頑張れ!」と背中を押す
何とか励ましてあげたい気持ちはよくわかります。でも、これが逆効果になることがあります。
不安が強い子どもの研究では、その不安の解消に大きく関わっているのが周りの大人の「子どもの感情をそのまま認めて言葉にしてあげること」である、と示されています※44。
「頑張れ」「大丈夫」という言葉は、実は子どもの「怖い・不安」という気持ちを、意図せずして「そんなこと感じちゃダメ」と打ち消すメッセージに受け取られがちなのです。
✅代わりに試してほしいのが、気持ちをそのまま受け止める言葉をかけることです。「ママと離れるの、さびしいよね」「怖いんだね」と子どもの言った言葉や気持ちをそのまま言葉にしてあげるだけで、子どもは「わかってもらえた」と感じて少しずつ落ち着きを取り戻せます。
2.「すぐ迎えに来るからね」と約束する
泣き止ませたくて「すぐ来るから!」と言ってしまう——気持ちはすごくわかります。
でも3歳の子どもは「すぐ」の時間感覚がまだあいまいです。「すぐって、昼ご飯の前?お昼寝の後?」と混乱してしまい、「ちゃんと来てくれる?」という不安が解消されないことがあります。
✅代わりに試してほしいのが、「短い針が6になったらお迎えに来るよ」「給食を食べ終わったら来るよ」など、子どもがイメージできる具体的な目安を伝えてあげてください。
3.こっそり去る
「泣いている間に見えなくなれば諦めるかも」——そう思ってそっと離れた経験はありませんか?
実は、これがうまくいく子もいますが、敏感な子には最も避けてほしい行動です。
専門機関の指針では、「こっそり去ることは、子どもに『ママはいつ消えるかわからない』という恐怖を植え付け、かえって分離不安を悪化させる※2」とはっきり述べられています。
✅子どもは大人の反応をよく見ています。親が動揺したり申し訳なさそうにしたりすると、子どもの不安も連動して高まってしまいます。子どもは親の感情を実はしっかり受け取って、モデリングしているのです。必ず笑顔で「行ってくるね」と伝えてから、気持ちよく離れましょう。
保育士も実践!気持ちよくバイバイできる「朝の3ステップ」

ステップ1.「いつ迎えに来るか」を具体的に伝える
「お仕事が終わったら来るよ」という大人側の行動より、「給食を食べて、お昼寝して、起きたらお迎えに来るね」といった子どものスケジュールで伝えた方が伝わります。
✅登園前に一日の流れを一緒に確認する習慣をつけると、子どもの中に「見通し」(この後どうなるかのイメージ)が育ち、不安が和らいでいきます。
3歳は「時計の時間」や「大人の行動」より、「子どもの生活の流れ」で伝えると、イメージが伝わりやすいです。
ステップ2. 「お決まりのスキンシップ(儀式)」でバイバイする
「ママは必ず戻ってくる」という安心感。この心の土台(安全基地)を作るには、毎日の繰り返しの体験が欠かせません※3。
そのために有効なのが、毎朝同じ手順でお別れをする「儀式」です。専門機関でも推奨されている方法で、保育現場でもその効果を何度も実感してきました※5。
- ハイタッチをして「いってらっしゃい!」
- てのひらにちゅっとして「ポケットにしまっておいてね」
- 「握手でバイバイ、またあとで!」と子どもの両手を握り歌う
✅毎朝「お決まりのスキンシップ(儀式)」があることで、子どもは「この後ママは行くけど、必ず戻ってくる」という流れを体で覚えていきます。
スキンシップは、親子を自然と笑顔に変えてくれます。「おきまりのスキンシップ」が、子どもの安心にもつながります。
ステップ3.笑顔で先生へ引き継ぎ、笑顔でその場を去る
お別れの後、心配でついその場いたくなったり、何度も振り返りたくなりますが、実は逆効果になることも。親がためらって立ち止まる姿に、子どもは「僕の気持ち聞いてくれる?」「もしかして帰れる?」と期待し、かえって泣きが強まってしまうことがあるからです。
笑顔で先生に挨拶をし引き継いだら、短くはっきり「行ってくるね!また来るよ!」と伝えてスッと離れましょう。専門機関の指針でも、お別れをダラダラと長引かせず、親が「ここは安全だからね」と確信を持って笑顔で去ることが、子どもの何よりの安心につながるとされています※6。
✅子どもは親の感情をモデリングしています。親に不安があれば子どもも不安になりますし、親が笑顔なら「別れても、大丈夫なんだ」と笑顔で離れることを学んでいけるのです。
登園時の泣きが続くお子さんをみていくと、別れ際の親御さんの心配そうな顔が見られることも。大好きなパパママのスッキリ笑顔が、子どもの気持ちの安定につながっていきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 泣いていても登園させていいの?
A. もちろん、大丈夫です!ただし「泣いていても園に慣れる」のは、園が安心できる場所だと子どもが体験できていることが前提です。先生への引き継ぎを丁寧に行い、お迎え後に「今日どうだった?」と笑顔で確認するなど、子どもの楽しさを確認する気持ちでいてくださいね。
Q2. 慣らし保育が終わっても登園しぶりが続くのは変?
A. 異常ではありません。慣らし保育の「終了」はあくまで保育時間の目安であり、心の適応のゴールではないからです。子どもによって慣れるペースは全く違います。慣らし保育では順調でも、本格的に預けだしたら朝の泣きが強くなることもよく見られます。親御さんと別れる時間という理解力が進んだことや、仕事の復帰など慌ただしい雰囲気を子どもなりに不安に感じる場合も。親子でゆっくり慣れていきましょう。
Q3. 幼稚園と保育園で登園しぶりの理由や対応に違いはある?
A. 登園しぶりの発達的な背景に違いはありません。ただし幼稚園は年少からの入園が多く「初めての集団生活」と重なりやすいという状況の違いはあります。どちらの場合も、今回お伝えした3ステップが有効です。
Q4. 3歳の登園しぶりは発達的に遅れていますか?
A. いいえ。分離不安(大切な人と離れることへの不安)は生後7〜9か月に始まる発達上の正常なプロセスで、3歳の入園タイミングに再燃することもよくあります(バッタリア(Battaglia et al.), 2016)。家庭での個別の関わりから、集団にはじめて入る切り替えに時間がかかるのは、当然とも言えます。みんなが通る道なので、心配し過ぎず笑顔で登園しましょう。
Q5. 「頑張れ」「大丈夫」と励ましてもいいですか?
A. 実は、逆効果になることが多いです。不安の強い子どもには「感情を認めて言語化する関わり」が有効です。子どもの発した気持ちを「そのまま受け止める言葉がけ」を意識してみましょう(ハレル(Hurrell et al.), 2017)。
Q6. 登園しぶりって、いつまで続きますか?
A. 多くは入園後1〜2か月で落ち着きますが、GW明けなど環境の変化で繰り返すパターンもあります。1か月以上毎日激しく続くなど心配な場合は園の先生や専門家に相談することもおすすめします。
登園しぶり、本当につらいですよね。でも保育士から見ると、泣きながらでも毎日来てくれる子どもたちって、本当にたくましいんです。お子さんは、毎日ちゃんと頑張っています。
まとめ:「行きたくない」は成長のサインです!

「行きたくない!」と泣ける子は、それだけお家の方との愛着関係が育ったということ。また、お家が安心できる場所なんだと、しっかり分かってきている証拠でもあります。
この時期の不安な気持ちは、ずっと続く訳ではありません。どうしてそのような気持ちになるのかを知って、時間がある時には、その気持ちをまるごと「ギュ」と包んであげましょう。その心地よさは、子どもに「がんばったね!」のメッセージとして届き、いつの日か笑顔の「がんばってくるね」につながっていきます。
どんな状況でも…子どもと園に向かう姿は、まさにステキな親子そのものです。
泣ける日があっても、たとえそれが続いたとしても……
毎日の笑顔の「バイバイ」は必ず子どもの心に届いています。
「安心して大丈夫だよ」その思いをじっくり伝えていきましょう。
📚 参考文献
- ※1 バッタリア(Battaglia, M.)ら(2016) 就学前の分離不安の異なる軌跡(Distinct trajectories of separation anxiety in the preschool years)Journal of Child Psychology and Psychiatry, 57(1): 39–46
- ※2 ゼロ・トゥー・スリー(Zero to Three)(2023)分離不安(Separation Anxiety)
- ※3 エインズワース(Ainsworth, M.D.S.)ら(1969) 愛着・探索・分離(Attachment, exploration, and separation)Child Development, 40(1): 49–67
- ※4 ハレルら(Hurrell KE, Houwing FL, Hudson JL)(2017)不安障害を持つ子どもの家族における親のメタ感情哲学と感情コーチング(Parental Meta-Emotion Philosophy and Emotion Coaching in Families of Children and Adolescents with an Anxiety Disorder)Journal of Abnormal Child Psychology, 45(3): 569–582
- ※5 ゼロ・トゥー・スリー(Zero to Three) (2023) "Preschool Prep”入園準備)
- ※6 Zero to Three(2023) 就学準備:幼児を保育園・幼稚園に備えさせる方法(Preschool Prep: Helping Toddlers Prepare for Preschool)
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