《ようこそ》あなたが輝けば、子どもも輝く。日常のささやかな幸せを一緒につないでいきましょう。

思春期

【思春期編】「ごめんね」が言えない年齢別の背景|自己肯定感を育て素直さを引き出す親の関わり方

2025年9月8日

思春期の子が素直に謝れずにしゃがみこんで悩む姿

小学校高学年から中学生になると、
親の目が届きにくい友達との関係や対人トラブルが増えてきます。

注意しても反発したり、謝れずに開き直る姿を見ると、
「どう関わればいいのだろう」と悩む人も多いのではないでしょうか。

実は、子どもが素直に「ごめんね」と言えないのは、
単なる反抗心ではなく、思春期特有の心の成長プロセスに深く関係しています。

大切なのは、無理に謝らせることではなく、
長い目で「自分から謝れる力」を育てていくこと。
その積み重ねが、自己肯定感を守り、親子関係をより良くしていくのです。

この記事では

・思春期の子どもが「ごめんね」と言えない背景
・子どもの気持ちを支え、長期的に「謝る力」を育んでいく方法
・自己肯定感を育て、親子関係をこじらせないための具体的な声かけ実例の紹介
発達心理の視点を踏まえ、保育士が分かりやすく解説します。

思春期の子が謝れない 5つの理由

思春期の子どもが「謝る」ためには、発達段階に伴う心理的背景「謝れない理由」を理解して関わることが大切です。

思春期の子が謝れない理由

1.謝ることが自己否定と感じてしまうから
2.自分と他者との比較で苦しさを感じるから
3.親に対する反抗と距離感の調整をしているから
4.感情の調整力がまだ未成熟だから
5. 言葉で気持ちを表す力が発達途上だから

1. 謝ることが自己否定と感じてしまうから

思春期は「自分とは何者か」を模索し、自我を確立しようとする大切な時期です。(※1)
このため、謝罪を「自分の価値を否定する行為」と受け止めやすくなります。
「ごめんなさいを言う自分=自分はダメな人間」と短絡的に結びつけてしまい、謝ること自体が強い不安や抵抗を生み出します。

  • 「謝ると負けた気がする」
  • 「自分を守らないと潰れてしまう」

こうした感覚が、子どもを「謝れない状態」へと追い込みます。

2. 他者と比較し羞恥心や劣等感を強く感じるから

思春期の子どもは、自己評価を「同年代との比較」に大きく依存する傾向があります。そのため、謝ることが「相手より劣っている証拠」と感じられ、強い羞恥心や劣等感につながります。
プライドや立場を守ろうとする心理から、口を閉ざしたり言い訳に走ったりするのです。(※2)

3. 主体性を保つため親との距離感を調整しているから

謝れないのは「親を困らせたいから」ではありません。親からの精神的な自立を模索する中で、「自分で考えたい」「コントロールされたくない」という自然な気持ちが働きます。
そのため、謝罪を迫られると「自分の主体性を奪われる」と感じ、言いなりになることを避けたり、意地を張る行動につながりやすいのです。(※3)

4. 感情の調整力がまだ未成熟だから

思春期の脳は前頭前野が発達途上にあり、感情を調整する力が未成熟です。怒りや悔しさが先に立ち、「謝る」という社会的スキルを発揮する余裕が持てないことがあります。
その場では謝れなくても、時間が経つと落ち着いて振り返ることができるケースも多いのです。
(※4)

5. 言葉で気持ちを表す力が発達途上だから

思春期の子どもは語彙力や抽象的思考が伸びていく時期ですが、複雑な感情を適切に言語化することはまだ難しい段階です。「謝りたい気持ちはあるけれど、言葉にできない」という葛藤を抱えていることもあります。(※5)

「無理に謝らせる」と起きる深刻なリスクを知ろう

無力感とあきらめ学習性無力感
自分の思いは伝わらない、「どうせ聞いてもらえない」と感じ、コミュニケーションを避けたり、反抗することで「自分にとって安全な距離」を保とうとします。

・不信感と不安感心理的リアクタンス
大人が「謝るべき」という表面的な行動だけに注目すると、自分は大切にされていないと感じ、反抗的な行動に向かいやすくなります。

自己肯定感が低下し、自己否定感が強まる
「どうせ私なんて…」という思いから、自分を価値のない存在と感じ、投げやりになったり、心を閉ざすことがあります。

MIMAポイント!
トラブルが起きると、つい大人も気持ちが焦ってしまい「早く謝らせないと」と思いがちです。しかし忘れて欲しくないことは、どんな子でも”失敗することはある”ということ。思春期に入ったからといって急に大人になり、トラブルがなくなるわけではありません。

うまくいかない中で、
・どう振り返るのか?
・どう自分に向き合うのか?
・どうやって相手を思いやるのか?
・どう解決していくのか

じっくり考えていく経験が大切です。

この過程を重ねることで、子どもは相手を思いやったり、自分を大切にし、より良いコミュニケーションを築けるようになります。大人はその道のりを支え、時に一緒に悩みながらも、最後は子どもを信じて見守る存在となることが、思春期には特に大切です。

「謝る力」に必要な心の育ち

「謝る力」につながる子どもの育ち

・相手の立場や気持ちを想像し、理解しようとする共感力
・「謝ること=自分を否定すること」ではないという自己肯定感
・「自分の思いを話せば理解し合える」という、人への安心感信頼感
・自分を信じ、相手を信じて一歩踏み出す勇気
・失敗しても立ち直り、人との関係を修復していける回復力レジリエンス

「謝る力」を育てる親の関わり方

思春期の子どもにとって「謝る」という行為は、単にルールを守るための行動ではなく、心の成長や人間関係のあり方と深くつながっています。ここでは、子どもが自ら「謝る力」を育んでいくために、親ができる関わり方を整理してみましょう。

1. 「謝る力」を長期的な視点で育てよう

謝罪は、相手の立場に立って考える力や、自分の気持ちを整理する力が必要になる高度な行動です。そのため、すぐにできることを求めるのではなく、長期的に育まれていくものだと理解することが大切です。
親が意識することは、「失敗しても自分の価値は損なわれない」という自己肯定感を支えること。そして子どもが「相手にも気持ちがある」と気づき、他者と折り合いをつけられる経験を積んでいくことです。

謝ることがゴールではなく、その過程で育まれる共感性・自己受容感・人間関係を調整する力を大切にしましょう。

2. 子どもの気持ちを言語化するサポート

子どもが謝れないとき、その背景には「悔しい」「自分をわかってほしい」といった強い感情が隠れています。しかし思春期の脳は感情を整理して言葉にする力(感情をコントロールする働き)がまだ発達途中であり、自分だけで表現するのは難しいことがあります。
そのとき親ができるのは、子どもの気持ちを代弁し、言語化してあげることです。
「悔しかったんだね」「そんなことがあったんだね」と言葉にしてもらえることで、子どもは「自分の感情を理解してもらえた」と安心し、防衛的な気持ちが和らぎます。

「自分を理解してくれる人がいる」その積み重ねが心を安心させ、「謝ろう」という気持ちにつながります。

3. 謝罪を「人間関係をよりよくする行為」として伝える

思春期の子どもにとって、「謝る=負ける」「自分が下に見られる」と感じるのは自然なことです。だからこそ、謝罪を「人とのつながりを守る力」として伝えることが大切です。
親自身が、家族や周囲の人に対して「ごめんね」と素直に言う姿を見せることは大きな学びになります。「謝る=人とのつながりを守る力」と視点を変えていけるよう、親が自然にモデルを示していきましょう。

「謝ること」は
自分をおとしめることではなく、むしろ関係を修復し、信頼を取り戻すための前向きな行為である――この視点を繰り返し伝えることで、子どもは「謝ることの価値」を実感していけます。

親子関係をこじらせない「声かけ実例」

思春期の子と話すコツは、会話の内容以前に「会話のスタート地点」に気持ちよく立ってもらうことです。「話そう」と思える心を引き出すためには、話したくなる雰囲気や環境を大人がどうつくっていくかが大切です。話し出すことさえができれば、子ども自身の力で善悪に気づき、次の行動「謝る」ことへのステップとなります。

1. 話を始める「きっかけの声掛け」をしよう
2. 話したくなるタイミングを待とう
3.「子どもから話し出す」チャンスを何度も与えよう
4.どうしても話せない時は、「大人の思い」から伝えよう
5.子どもの話を最後まで聞きましょう
6.状況を一緒に整理し、次のステップを考えましょう
7.これからどうしたら(どう変わったら)解決できそうか?聞きましょう
8.ポジティブなフィードバックを行いましょう

1.話を始める「きっかけの声掛け」をしよう

友達や先生から事情を聞いていたとしても、あえて「何も知らない」という前提で聞いていくほうが、子どもは安心して話しやすくなります。

良い例
・「きょうはどうしたの?」
・「何かあった?」
✖️悪い例
・「また何かしたの!」
・「友達怒らせたんでしょ?」
・「先生から電話があったよ!」

はじめから決めつけたり、怒り口調で質問すると、子どもは「どうせ話しても怒られる」「聞いてくれないに決まっている」と感じ、口だけでなく心まで閉ざしてしまうことがあります。

2.話したくなるタイミングを待とう

帰宅後すぐは、トラブルで子どもも疲れてしまい気持ちの整理がつかない場合も。「1.きっかけの声掛け」をしても口を閉ざすなど話したがらない時は、無理に話しかけず、いつも通りの生活をまずは保障しましょう。

良い例
・「さあ、ご飯食べようか」
・「お風呂行っておいで」など、普段通りの声掛け
✖️悪い例
・「話さなきゃ、ダメじゃない!」
・「ちゃんと説明してからにして!」

急かされる声掛けは、子どもの恐れや警戒心を招き、本音を話したいと思えなくなります。心配だからこその気持ちも分かりますが、その意図は伝わりません。

3.「子どもから話し出す」チャンスを何度も与えよう

子どもが安心して話せるのは、日常のリラックスした時間です。
たとえばお風呂に入った後や、夕食を食べ終えた後など、落ち着いたタイミングで声をかけてみましょう。

まずはシンプルな一言で、話のきっかけをつくることが大切です。もしすぐに話せなくても、短く事実を伝えるなどして、子どもが自分から話し出せるチャンスを何度も用意してあげましょう。

良い例
・「今日はどうしたの?」
 ⇨聞いた後は、すぐに答えなくても静かに待つ。
・「先生からちょっと心配する連絡があってね」
 ⇨事実を伝え、安心できる雰囲気をつくる。
✖️悪い例
・「ねえ、何があったの!」
・「早く言いなさい!」

問い詰める聞き方や、マイナスの感情で子どもを見ていることが伝われば、素直な気持ちや出来事を話し始めることはできません。

MIMAポイント!
もしも…
あなたに向かって話しかけてきた相手が、
あなたの状況や話を一切聞かず、怒りや問い詰める態度で接してきたとしたら…。
あなたは、安心して冷静に自分の状況を説明できるでしょうか?

わが子の困りを早く解決してあげたい気持ち、相手との関係性への心配。
経験上、つい様々な状況が頭に浮かぶ大人は、子どもの話を聞く前から判断し、結果を急いでしまいがちです。
本来子どもを守りたいはずなのに、その関わりが親子関係の悪化を招いてしまう。
これは、とくに思春期の親子に起こりやすい状況です。

トラブルに向き合うのは、あくまで子ども自身です。
大人に責められるから考えるのではなく、
安心できる環境で落ち着いて振り返れるからこそ、
自ら善悪を判断し、これからすべきことに気づいていけるのです。

私たち大人は、子どもが「自ら考えようとする力を、そっと支える存在」であることを忘れないようにしましょう。

4.どうしても話せない時は?「大人の思い」から安心感を伝えよう

それでも、今までの関係や、出来事の大きさによってショックが大きく、話せないこともあるかもしれません。そんな時は、穏やかに気持ちに寄り添い「安心」を伝えていくことが必要です。

良い例
1.「しんどかったんだね」「大変だったね」など、気持ちに寄り添う
⇨「そういうこと、お母さんもあったな」
 「誰でも上手く伝わらない事ってあるよね…」
 「あなたが悪い子なのではなく、誰にでも起こり得る失敗なんだよ」と受け入れて伝える。
2.「きっと、考えていけば上手くいく方法があるよ」
改善できる方法や解決策があるという希望を知らせ、一緒に考えていく提案をする
 
✖️悪い例
・「話すことができないようなこと、何でしたの!」
・「いつも、問題起こすよね」

子どもの特性や行動を『あなたはこういう子』と否定的に決めつけてしまうラベルづけ(ラベリング)は危険です。とっさに言ってしまった言葉でも、子どもの心に刻まれ「どうせ自分はそういう人間なんだ」と思い込み、変わろうとする気持ちを失わせてしまいます。

この後の対応は
👉学童期編:「ごめんね」を育てる効果的な対応方法で解説していることと重なる部分が多いですが、思春期のポイントは子ども自身の考えや決断で進めていくことです。

5.子どもの話を最後まで聞きましょう

最後まで聞くことで、子どもに「受け止めてもらえた」という安心感が生まれ、次の言葉が出やすくなります。

良い例:言葉にならなくても頷きや共感の相槌でサポート
✖️悪い例:「それで、結局どうしたの!」「だからどういうこと?」

途中で遮ったり「こういうことなんでしょ?」と親がまとめてしまうと、子どもは「どうせ分かってもらえない」と感じやすくなります。

6.状況を一緒に整理し、次のステップを考えましょう

状況を一緒に整理することは、思考と感情を客観的に見直す力(メタ認知)を育てます。親が一方的に答えを出すのではなく、子どもの言葉を引き出しながら「じゃあ次はどうしようか」と共に考える姿勢が大切です。

良い例
・「何があったの?」
・「そう言ったら、どうなったの?」
・「そのときどう感じたの?」
✖️悪い例
・「だからあなたが悪いんでしょ」
・「また同じこと?いい加減にしなさい」
・「言い訳はいいから、相手に謝りなさい」

7.これからどうしたら(どう変わったら)解決できそうか?確認しよう

謝罪や解決は、子ども自身の意志があってこそ意味を持ちます。問いかけることで、子どもは自分なりの答えを探し出し、主体的に行動に移せるようになります。

良い例
・「そうだったんだね。じゃあ、どうしたらいいと思う?」
・「どう言えば、相手に伝わるだろうね?」
✖️悪い例
・「言い訳はいいから、早く謝りなさい!」
・「どうなっても知らないからね!」

決めつけや突き放す言葉は、子どもを不安にさせ、つらい現実に向き合う力を奪ってしまいます。子どもは「どうせ自分の考えは聞いてもらえない」と感じ、対話よりも反発や沈黙を選ぶようになります。

8.ポジティブなフィードバックを行いましょう

小さな一歩でも褒めたり、肯定的に伝えたりすることで、子どもの自己肯定感が高まります。努力や前進した部分に注目し言葉にすることが、次の挑戦へのエネルギーになります。

良い例
・「話してくれてありがとう」
・「自分で考えられたね」
✖️悪い例
・「なんで最初からできなかったの?」
・「はあ、やっと言えたね…遅いよ」
・「それくらい、できて当たり前だよ!」

失敗や未熟さに視点を向けたフィードバックは、せっかく話をしてくれた子どもの自己肯定感を下げるだけでなく、マイナスのメッセージを繰り返し浴びせることで、自己否定感につながったり、現実に向き合わずに済ませようとするなど、深刻な対人トラブルにも発展しかねません。

まとめ:「ごめんね」は「大きなはじめの一歩」です

思春期の「ごめんね」は、
単に表面的な言葉のやり取りだけではありません。

子どもが抱える苦悩や悔しさ、誤解や孤独と向き合いながら、
思い通りにはならない社会や友達との関係に、
どう向き合い、どうやってつながっていけばいいのか?を学ぶチャンスです。

謝罪は、ゴールではなく、
他者を思い、関係を修復するための「大きなはじめの一歩」なのです。

子ども自身の気づきや希望を大切に、
わたしたち大人も思いを受け止め、子どもを信じ、一緒に成長にしていきましょう。

※1 エリク・H・エリクソン(Erik H. Erikson(1968))著/中島 由恵 訳(2017年11月)
翻訳版「アイデンティティ――青年と危機」(新曜社

※2 米国国立アカデミーズ(2019)
思春期の約束/すべての若者に機会を」Chapter 5「Adolescent Development」
(National Academies Press)

※3 スタインバーグ, L. & モリス, A. S. (2001).
思春期の発達 (Adolescent Development)」Annual Review of Psychology

※4 ケイシー, B. J., ゲッツ, S. & ガルヴァン, A. (2008).
思春期の脳 (The adolescent brain).」Developmental Review

※5 ナチュラーレ, M., カヴァリーニ, E. & カプリオッティ, L. (2024)
子どもと青年における感情特有の語彙と感情理解の関連Developmental Psychology.

    • この記事を書いた人
    • 最新記事

    保育士 MIMA

    大学で福祉全般を学び、児童指導員や保育士歴18年目、3児の母。 学生時代からキャンプの運営やグループワークを実践し、ボランティア活動では、障害のある方や少年院で生活する子どもたちなど、大人から子どもまで幅広い人たちと交流。失敗を重ねながらも『一人ひとりが輝くために大切なこと』を学び、実践。”ベテラン風新人”をコンセプトに、学ぶ姿勢を持ち続けたい!と、現在も保育園保育士として子どもたちに向き合い続けています。