かつて、わたしにも赤ちゃん育児に追われる毎日がありました。
昼夜の区別なく続く、授乳・おむつ替え・寝かしつけ。
抱っこしてあやし、やっと寝たと思ったら…、そっと布団に置いた瞬間に泣き出す。
自分の食事は、片手でつまめるおにぎりやパン。
レンジで温めたごはんも、泣き声で呼ばれ、あやしているうちに冷めてしまう。
特に、母親から離れるとすぐに泣いてしまう赤ちゃん時代の長男。
わたしはいつも、お風呂に急いで入り、髪や体をザっと洗って一目散に戻っても、毎回大泣きでした。夜は、もちろん細切れの睡眠。昼間のわずかな手が空いた時間も家事に追われ、体がしんどい時に休むことを選べば、その分だけ家事は滞ってしまう…。
そんな日々の中、私は「手伝ってほしい」という気持ちがあっても、うまくパートナーに伝えられず、いつも”ひとりで頑張っている”と思い込んでいました。
睡眠不足と日々積み重なる疲れで、「おはよう」の言葉がパッと頭に浮かんでも声に出せず、赤ちゃんに向ける視線のまま、下を向いて過ごす日々。
「わたしの話を聞いてほしい」
「わたしにもも、『おつかれさま』って言ってほしい」
そんな本音があるのに、パートナーには伝わらず、苛立ちが募るばかり。
でもある日、ふと思いました。
「もしかして、相手もわたしと同じように、
”自分を見てほしい”
”話を”聞いてほしい”
そう思っているのでは?」と。
パートナー自身も、赤ちゃんが生まれたことで「もっと頑張らなきゃ」と自分にプレッシャーをかけ、私が赤ちゃん育児をする必死な様子に「邪魔できないな」と、距離を置いて見守っていたのかもしれない…。
私が寝不足でしんどく、休みもなく、褒めてもらえないと感じていたように、パートナーもまた、仕事と赤ちゃんのことで必死に踏ん張っていたのではないか。そう思えたとき、”頑張っているのはわたし一人じゃないんだ”と気づきました。
勇気を出して、私は聞きました。
「最近どう?」
「仕事は忙しい?」
すると、パートナーの表情がふっと柔らかくなり、緊張がほどけていくのを感じました。
その後、久しぶりに顔を見合わせて気持ちよく話せた時間は、今でも鮮明に覚えています。
それからは、自分のしんどさを抱えたままにせず、素直に気持ちを言葉にできるようになりました。その日の赤ちゃんの様子で大変だったこと、頑張ってやった家事、ささいな日常の出来事、そして手伝ってほしいことまで。少しずつ、気持ちを伝え合える関係に変わっていったのです。
産後のすれ違いは、お互いが必死であればあるほど、相手の気持ちが見えなくなってしまいます。ほんの少し力を振りしぼって声をかけることで、ふたりの溝を埋め、温かいつながりを取り戻せることを実感しました。
「赤ちゃん育児」
赤ちゃんの命を守り、日々向き合ってきたあなたの頑張りは、誰に何と言われても本物です。どうか、その努力と愛情を、どうか自分自身にも向けてください。
自分を認める気持ちは、毎日に少しの余裕を生みます。
そしてその余裕は、あなたの大切な人へ向ける優しさや勇気となり、気持ちが通い合う喜びをさらに広げてくれます。
うまくいく日も、思うようにいかない日も…
あなたは毎日、子どもに向き合い続けています。
それだけでも、素晴らしいことなのです。
どうか、そんなあなた自身を認め、そっと褒めてあげましょう。