「伝えたいのに伝わらない…」その原因は“言い方”かもしれません
「何度言っても同じことをする」
「怒っても響いてない気がする…」
子育ての中でそんな気持ちになったことはありませんか?
子どもとのすれ違いが生まれるとき、大人の“伝え方”が無意識のうちに相手を責める形になっていることがあります。
たとえば──
- 「なんで何回言ってもわからないの!」
- 「また忘れたの?どうしてできないの?」
これらはすべて、相手を主語にした「Youメッセージ」。
否定や非難と受け取られやすく、子どもは心を閉ざしがちです。
Iメッセージとは?
「Iメッセージ(アイ・メッセージ)」
「私は〜と感じる」と自分の気持ちに焦点を当て、相手に伝える方法です。
例:❌「宿題やらなきゃ、ダメじゃない!」
⭕「宿題が終わっていないと、私は明日の朝が心配になるよ」
このように、子どもの行動に対して大人の気持ちや困りごとを正直に伝えます。自分の気持ちに焦点があるので、相手からすると「責められている」「警戒しなくては」と感じることなく、相手の気持ちを受け止めることができるのです。
「Iメッセージ」とその効果
Iメッセージは、臨床心理学者トマス・ゴードンが提唱した「親業(Parent Effectiveness Training)」で体系化された方法です。
また、非暴力コミュニケーション(NVC)や自己開示理論にも通じています。
・トマス・ゴードンについてはコチラ👉「親業訓練協会」
・「親業」についてはコチラ👉「トマス・ゴードン博士ホームページ」)
Ⅰメッセージの心理的効果
- 自分が責められているわけでは無いので、相手が防衛的になりにくく、話を受け入れやすくなる
- メッセージを発する側が自分の感情を把握し、適切に相手に表現できるようになる
- 子どもが「気持ちを言葉にする」モデルとして学んでいくことができる
Iメッセージの基本構造
Iメッセージは、以下の3つのパーツで構成されます:
【行動】+【感情】+【理由】
例:「約束の時間に帰ってこないと、私は不安になるよ。事故にあっていないか心配だから」
このように
相手をコントロールせずに、自分の内側を見せることで、信頼と共感が生まれやすくなります。
年齢別:Iメッセージの実践例
幼児期(3〜6歳)
まだ抽象的な表現は難しい時期。感情の名前を伝えることを優先し、短く・具体的に伝えます。
- 「大きな声で叫ばれると、ママはびっくりしちゃうよ。優しい声だと嬉しいな」
- 「怒ってると、ママは悲しくなるよ。ママはうれしいな」
MIMAポイント!
子どもが癇癪(かんしゃく)などを起こしている時や、強い怒りで泣け気持ちが切り替えられない時などに、Iメッセージを2段階で伝えていくと効果的です。
1.「こういうのって、つらくて腹が立つよね!」などまずは子どもの気持ちを言葉に(受容と感情の言語化)していきましょう。
2.子どもが「そうそう!私の気持ち分かってくれたんだ」と思えた後に、Iメッセージを使うと効果的です!
2段階の伝え方は、子どもの今の気持ちを受け止め、行動を望ましい方向に変化しやすくなります。また、「いつも泣いたり怒ったり…困っている」というお子さんでも、Iメッセージを繰り返すと、少しずつ自分で思いを言葉にできるようになります。言葉にしていく過程の思考や、自分を振り返り表現する客観性が、困った行動(泣けると叩いてしまう、怒ると話が入らないなどの困り)から、望ましい表現ができるようになっていくのです。
学童期(6〜12歳)
子どもが論理的思考を始める時期。
行動・感情・理由の3要素をバランスよく伝えると、子どもも納得しやすくなります。
- 「宿題を後回しにすると、私は明日が心配になる。忘れないように一緒にやろうか」
- 「ゲームが長くなると、私は少し困ってしまう。寝る時間が遅くなると体に良くないからね」
MIMAポイント!
どうしてダメなのか?どうしたらいいのか?などの理由があれば納得できることが多いです。子どもを責めるのではなく、「こうすることで、それがあなたにとって大きな不利益になるから心配なんだ」など、相手を思いやる言葉を選んでいくことで、子どもが理解しやすいだけでなく、大人の愛情を感じる絶好の機会にもなるのです。
思春期(12歳〜)
親の干渉に敏感になる時期。
感情を正直に見せ、相手の気持ちにも配慮した言い方が効果的です。
- 「最近話してくれなくて、私は少し寂しく感じる。でも、そういう時期なのかもしれないとも思ってるよ」
- 「スマホを見てばかりいると、私はちょっと心配になる。寝不足にならないかなって」
MIMAポイント!
対等な関係を意識しつつ、思いやりを込めることで伝わりやすくなります。
たとえ相手が思春期で聞いてないような素振りでも、こちらの思いをIメッセージで伝えることで、子どもにはちゃんと愛情が届いています。
こんな経験をしました:暴れることが多かった子に、そのようなことを意識して関わったことがありました。最初は、「うざい!」「あっちいけ!」の連続でしたが、繰り返す中で少しづつ私の前では落ち着きを見せるようになりました。時間はかかりましたが、いつしか「先生、あのさ~」と、自分の思いを素直に話してくれるようにもなったのです。
「Iメッセージ」を伝える時の3つのコツ
- 「あなたは」ではなく「私は」で始める
→ 相手を主語にしない - 感情を素直に言葉にする
→ 「心配」「悲しい」「うれしい」「困る」など具体的に - 決定権は相手にある!🍀最重要!🍀
→ こちら側の思いは伝えますが、決定するのは子ども自身。あくまで、考えや行動の選択肢を残す形が理想です。
まとめ:伝え方ひとつで、親子関係が変わります!
Iメッセージは、子どものためだけの技術ではなく、大人側が相手を思って愛情を素直に伝えていく手立てでもあります。
このようなコミュニケーション法を活かすことで、自分の真意に大人も気づかされたり、子どもの心にも素直に入っていくことで良好な関係につながっていくことができるでしょう。
