「あ!叩いちゃった…」「すぐに手が出てしまう…」
2〜3歳の子どもを育てていると、友達との関わりの中で 叩く・押す・引っ張る といった行動に直面することがあります。
「私のしつけが、できていないのでは?」「うちの子、乱暴ってこと…?」と不安になる方も少なくありません。
でも、こうした行動には発達的な意味と背景があるのです。
👶 「なぜ手が出るの?」 2〜3歳の発達段階から見る背景
自己中心性と「思い通りにならない」経験
2〜3歳の子どもは、自己中心的な思考(=エゴセントリズム)の時期にあります。ここでいう「自己中心性」とは、一般的な「自分勝手」「わがまま」の意味とは異なります。
発達心理学でいう「自己中心性」とは、
・自分の視点と他者の視点の違いが理解できず、そのため、他人も「自分と同じように考えている」と無意識に思い込んでしまう状態のことです
・他者の気持ちや視点を理解することが難しく、「自分が思った通りになるはず」と感じながら世界を見ていることを言います。
あくまで発達の過程で自然に現れる段階的なものなのです。
よって、
・友達が自分のおもちゃを取った
・遊びのルールを変えた
などの場面で、「自分の思い」と「現実」が一致しないと、強い感情があふれ、行動につながるのです。
📚 出典:ピアジェの理論と認知発達段階:SimplyPsychology.org
言葉の発達と感情のコントロールのギャップ
この時期は言語の発達が進む途中です。
「言いたいけどうまく言えない」「伝わらないもどかしさ」がストレスになり、それが行動(=手が出る)という形で表現されてしまうことがあります。
📚 出典:厚生労働省「保育所保育指針解説書(平成30年)」
「2歳児は言葉で表現できることが増えるが、感情の調整はまだ未熟である」
友達への関心はあるが、どう関わればいいかわからない
2〜3歳は、最初「ひとり遊び」から
⇨「並行遊び」(他の子どもと同じ空間で、同じような遊びをしながらも、互いに関わらずにそれぞれ一人で遊んでいる状態)
⇨「関わりのある遊び」(友達や友達の遊びへの興味から、関わりたいと思う)へと移行する時期です。
友達に興味はあるけれど、関わり方のスキル(順番を待つ・言葉で伝えるなど)が未熟なため、物理的にアプローチ= 叩く・押す・引っ張る などしてしまうことがあります。
手が出る行動への具体的アプローチ法 4選
1.「ダメ!」ではなく、代わりの行動を伝える
「叩いちゃダメ!」だけでは伝わりません。代わりにどうしたらよかったか?を、具体的に教えてあげましょう。
✅ 例)
・「◯ちゃんに“かして”って言ってみようね」
・「おこってるの?じゃあ“いや!”ってお口で言っていいんだよ」
▶️ 育つ力:言語表現力・自己主張の方法・感情の調整力
2. 起こった直後ではなく、落ち着いたあとに伝える
子どもが興奮状態のときに言葉で諭しても、理解は難しいです。
安全を確保し、まず落ち着くことを最優先にしましょう。
気持ちが落ち着いたら、「さっき何があったの?」「どうしたかったのかな?」と、一緒に考えたり整理したりして伝えると、学びが深まります。
3.「こういうときは、こうするといいよ」を事前に伝えておく
手が出る前の予防として、「もしおもちゃが取られたら?」など、事前にイメージをつける声かけも効果的です。
✅ 例)
・「もし”かして”って言われたら、”いや”って言ってもいいよ。でも終わったら、”どうぞ”って、かしてあげようね。」
・「順番こするから、“つぎね”って言おうね」
MIMAポイント!
子どものトラブル時は、なかなか大人の話が入らないことが多いものです。でも、どんな子もしっかり聞いてくれる場面が実はあります!
それは、普段の遊びの中で「お人形やぬいぐるみを使って”ごっこ遊び”として見せる」ことです。
集中して聞いてくれる子が多く、また「こんな時はどうしよう…」と呼びかけると、子どもなりに一生懸命考えて応えようとしてくれます。
機嫌のいい時こそ、遊びの中で自然と場面に応じた対応を、子ども自身が考えられるのでおススメです。
4. 安心できる大人のまなざしと声かけで“気持ち”を代弁する
叩く前に感じた気持ちに寄り添ってあげることが、自己理解の育ちにつながります。気持ちを受け止めた後に、状況や相手の想いにふれて話し合っていけるといいでしょう。
✅ 例)
・「〇〇したかったんだよね」「悔しかったんだね」まずは気持ちを受け止める
⇨「でも叩いたらお友達びっくりしちゃうね」
⇨「どうしたらよかったかな?」を話し合う。
▶️ 育つ力:自己認識・共感・感情の言語化
🌱「関わりたい気持ち」を大切に育てていきましょう
子どもが手を出してしまう背景には
「関わりたい」「自分の気持ちを伝えたい」という、前向きな思いが隠れていることがあります。
それは、子どもが他者とつながろうとする大切な発達のサインです。
大人がすべきことは
ただ叱るのではなく、そうした行動の裏にある気持ちを受けとめ、子ども自身がそれに気づけるように導くことです。
そして、「どう伝えたらよかったか」を一緒に考える経験の積み重ねが、やがて相手とやりとりする力や、自分の気持ちをことばで表現する力へとつながっていきます。
こうした姿は、誰もが通る発達の過程です。
焦らず、繰り返し、丁寧に関わっていくことで、子どもは少しずつ人と関わる力を身につけていきます。
今ここにある「伝えたい」という気持ちを大切にしながら、一歩一歩、一緒に子どもの育ちを見守っていきましょう。