小学生になると、友だちや大人との関わりが一気に広がります。
「悪いことをしたときは謝る」というルールを理解しているように見えても、
いざという場面で「ごめんね」と言えないことに悩む親御さんは少なくありません。
「素直じゃないから?」
「意地っ張りなのかな?」
そう感じるかもしれません。
学童期の子が「謝る」ためには、
他者との比較や、プライドを超えて
「客観視する力」をつけていくことがポイントです。
🧒 学童期の子どもが「ごめんね」と言えない3つの理由
1. 自分と相手を比べる力が育ち、プライドが芽生えるから
学童期になると「自分と相手を比較する力」が育ちます。
そのため「自分だけが悪いと認めることが恥ずかしい」「プライドが傷つく」と感じやすくなります。
謝らないのではなく「謝ることで自分が下になる」と考えてしまうため、素直に言葉が出せないのです。
また、兄妹や友達が見ている場面では「意思を変えられない」こともあります。
2. 強い正義感から「自分は悪くない」と思ってしまうから
小学生はルールや正義感を重視する時期です。
「相手も悪いのに、なぜ自分だけ謝るの?」
と納得できず、「ごめんね」が出てこないことがあります。
3. 感情のコントロールが追いつかないから
学童期は感情を整理する力がまだ発達の途中です。
「謝りたい気持ちはあるけど、怒りや悔しさが先に出てしまう」ため、タイミングよく「ごめんね」が言えないことがあります。
親から見ると「謝らない=悪い態度」に映りますが、実際には感情の処理が追いついていないだけなのです。
✅ 学童期:「ごめんね」を育てる効果的な対応方法
学童期は、トラブルや失敗を通して善悪の判断や社会性を学んでいける大切な時期です。
1.子どもが話しを最後まで聞きましょう
子どもが自分の「状況」や「気持ち」を話せるよう、しっかり聞き手に回ります。
2.子どもに他者の想いを想像してもらいましょう
「相手はどう思ったかな?」と、他者の気持ちを想像する時間をつくり、一緒に考えます。
3.アドバイスは話を十分聞いた後にしましょう
話の途中で口を挟むと、子どもの意欲を削いでしまったり、考える意欲を奪ってしまうことがあります。子どもの想いをしっかり話し切ることで、その後のアドバイスにも耳を傾けられるようになります。
4.謝罪の意義を伝えましょう
「だれでも失敗はある」ことや、「謝ることで関係が良くなる」など謝罪のメリットを具体的に伝えます。
5.ロールプレイで練習しましょう
謝罪の場面を再現し演じることで、実際の場面でスムーズにコミュニケーションが取れるよう、対応力を養います。
6.ポジティブなフィードバックを行いましょう
謝罪ができたこともそうですが、話し合いができたことや、自分を振り返って話せたことなど、具体的な過程を褒めることで自信につなげましょう。
🌱 この時期の関わりで育まれる力
客観視する力:自分の言動を相手の立場から少しずつ見られるようになります。
責任感の芽生え:行動が周囲に与える影響を理解し始め、相手や社会に対して責任を持って行動したいと思うようになります。
自己肯定感:話をきちんと聞いてもらえたり、努力を認めてもらう経験から、「自分は大切にされている」と実感できます。
道徳性の芽生え:「正しい・間違っている」だけでなく、社会的ルールや約束を意識できるようになります。
社会的スキル:友達や大人と関わる中で、コミュニケーション力が高まります。
感情のコントロール力:怒りや悔しさ、恥ずかしさなどが先に出やすい時期ですが、経験を通して少しずつコントロールする方法を学んでいきます。
🛠「謝る」ことが難しい子へのサポート(学童期編)
学童期になると社会的な関わりが広がり、ルールや友だちとの関係を意識して行動できるようになります。
一方で、特定の状況やコミュニケーションで困難さを感じる子も少なくありません。
例えば、
- 言われたことをすぐ理解して行動するのが難しい
- 感情の整理がうまくいかず、友だちとトラブルになりやすい
- 注意が散漫になりやすく、約束やルールを守りにくい
こうした特性は、発達の過程で誰にでも見られることがあります。
「うちの子は特別?」と心配する必要はありません。
大切なのは、理解とサポートの工夫です。
環境を整えることで、子どもは安心して学びやすくなります。
✅ 「謝る」ことが難しい子へのアプローチ
「謝らない子」は謝れないのではなく、謝らない理由が隠れています。そこに気づいてアプローチしていくことが大切です。
・どこまで状況を理解しているのか確認しよう
話を最後まで聞き、子どもの状況理解度を確認します。
もし何度も同じトラブルを繰り返す場合、「考え方」や「状況の見え方」に傾向が見えることがあります。
・状況を整理して提示しましょう
言葉での状況整理が難しい時は、ロールプレイや絵や図を使って示すと、理解が深まり「次にどうすればいいか」に気づきやすくなります。
・感情に寄り添いましょう
「悔しかったね」「怒れたんだね」と気持ちを受け止めることが、安心して気持ちを出し行動できるようになる第一歩です。
・具体的な選択肢や手順を示しましょう
「どうしたらよいか」分からない場合は、「こうすると友だちと仲直りできるよ」と具体的な手順を知らせます。
・大人がモデルを示しましょう
ロールプレイをすることで、学ぶ機会をつくります。理解度に応じ、安心できるまで何度か繰り返します。それでも不安で言えない時は、一緒に「ごめんね」を言いに行くことで学んでいくことができます。
・繰り返しの経験を保障しましょう
日常の小さなトラブルも、振り返りの機会として活用しましょう。経験を重ねることで、少しずつ判断力や行動力が育ちます。
MIMA ポイント!
学童期は「自分でできること」と「一人で乗り越えるのが難しいこと」が混在する時期です。私たち大人は「できないことを指摘する」だけではなく、「どうしたらできるか?」を一緒に考えることが大切です。個々の特性に合わせた関わり方を意識して、あきらめず関わっていきましょう。
🤝 それでも困りが続くときは
もし「何度伝えても理解できない」「友だちとのトラブルが続いてしまう」と感じたら、ひとりで抱え込まず、地域の子育て支援センターや発達相談窓口に相談するのも有効です。
- 学校のスクールカウンセラーや教育相談室
- 地域の発達相談窓口・子育て支援センター
これらの相談先では、同じような困りを持つ子や家族の気持ちに寄り添い、支援や工夫を教えてくれます。親が安心できる環境を整えることで、子どもも少しずつ困難に対応する力を育むことができます。
💡 まとめ:トラブルは絶好の成長チャンス
学童期は、活動範囲がぐっと広がり、学校や友達との関わりが豊かになる一方で、感情のコントロールや人間関係のトラブルなど、さまざまな課題にも直面します。
こうした困難は、ときに大きな壁に感じられるかもしれません。
しかしそれらは、成長していくうえで欠かせない大切なプロセスでもあります。
「問題」としてではなく、「その子らしい成長の一部」として受けとめること。
周囲の大人が環境を工夫しサポートすることで、「絶好の成長チャンス」につながります。
学童期の「ごめんね」は、ただの言葉で終るものではなく、
自分を見つめ、相手を理解し、より良い関係を深めていく第一歩です。
子どもの気持ちに寄り添いながら、その経験を一緒に乗り越え、親子の絆をより深めていきましょう。